準備と戦略こそが、完走率57%の壁を突破する唯一の武器だ。
りんごちゃん
野辺山ウルトラマラソンって100kmでしょ?フルマラソンの2倍以上なんだけど…完走できる人ってそんなに少ないの?
バナナぴろし
そうなんだよ。野辺山の完走率は例年60〜70%で、2026年の100km男子はなんと57.09%。出走した2,067人のうち、ほぼ半数がゴールにたどり着けなかった難関コースなんだ。
りんごちゃん
ええっ!?半分もリタイアしちゃうの!?バナナぴろしは…ちゃんと完走できたの?
ナップル博士
野辺山が恐ろしいのは距離だけではないのじゃ。公式パンフレットは累積標高「2,000m超」と書いておるが、GPS実測では2,700mに達することが多い。フルマラソンを走りながら高尾山を2回登るようなもの、と考えれば過酷さが伝わるかの?
バナナぴろし
バナナぴろしは熱中症で吐き気と戦いながら、制限時間14時間のわずか16分前、13時間43分22秒でなんとかゴールしたよ。この記事では、野辺山の難易度・装備・フェーズ別戦略から、実際のレース展開とラップ全記録まで、完走の全部を紹介していくよ!
この記事は、2026年5月17日の第32回大会を、熱中症と内臓疲労に苦しみながらも完走したバナナぴろしの実体験レポートだ。大会概要・難易度の正体・必携装備・フェーズ別戦略・タイムシミュレーション、そして実測ラップの全記録まで——野辺山100kmの完走に必要なすべてを、ここにまとめたよ。
【終了】野辺山ウルトラマラソン2026の大会概要と参加条件
数字が証明する日本屈指の難関ウルトラのスペックです。
全国から集まった猛者たちをも容赦なくふるいにかける、日本屈指のタフなコーススペックの真実がこちらです。
基本情報・コーススペック
- 開催日:2026年5月17日(日)※終了
- スタート時刻(WAVE A):午前4時55分
- スタート地点標高:約1,350m
- コース最高地点(標高):1,908m(空気の薄い富士山5合目付近)
- 公式累積標高:2,000m超(※GPS実測値では約2,700mに達するケースが多発)
完走制限時間(100kmの部)
- 制限時間:14時間(WAVE A=4:55スタート、18:55ゴールまで)
- 完走率の目安:例年60%〜70%(天候や気温の急激な変化により、50%台にまで激変するサバイバルレース)
- 完走最低ラインの目安:フルマラソンでサブ4.5(4時間30分以内)の実力が最低限必要
スタート直後から始まる標高1,908mへの急登、中盤の激しい寒暖差、そして71kmから待ち受ける平均斜度10%の「馬越峠」。
完走率60%という数字が示す通り、小細工なしの徹底した「装備の準備」と「ペース戦略」がない者は、完走メダルに指一本触れることもできないあまりに厳しい大会です。
第32回大会(2026)の出走率・完走率データ
そして、その厳しさは2026年大会の公式記録にもはっきりと刻まれました。100km男子の完走率はわずか57.09%。出走した2,067人のうち、実に約4割の887人が無念のリタイアを喫したのです。
100km男子の完走率は57.09%、全種目合計でも60.38%という、まさにサバイバルレースでした。
数字を見れば一目瞭然です。
42kmの部が完走率90%であるのに対し、100kmの部は男女ともに50%台。距離が倍以上になることで、難易度は単純な倍ではなく、まったく別次元の世界へと跳ね上がるのです。
野辺山ウルトラマラソンが完走率60%の難関コースになった理由
野辺山ウルトラマラソンがなぜ「東の横綱」と呼ばれ、これほどまでに完走率が低いのか。その真の答えは、ただ100kmという距離が長いからではありません。高地特有の薄い酸素と、公式パンフレットの数字を遥かに凌駕する目に見えない累積標高の罠、そして高低図に現れない寒暖差がランナーの肉体を内側から破壊し尽くすからです。
そして、その難関を生き抜くための準備こそが、スタートラインに立つ前から始まっています。
高地の薄い酸素と「累積標高2,700m」の罠
スタート地点ですでに標高約1,350m。ここから、空気の薄い富士山5合目に匹敵するコース最高点標高1,908mまで一気に駆け上がります。
平地と同じ感覚でペースを上げてしまうと、自覚のないまま心肺が悲鳴を上げ、前半だけでエネルギーを枯渇させてしまうのです。
さらに恐ろしいのが累積標高です。
公式パンフレットには「2,000m超」とマイルドに書かれていますが、GPSデータで精密に測定すると、実際には細かなアップダウンが折り重なり、実質累積標高約2,400m相当の衝撃が脚に突き刺さります。
この400mの差は、後半の脚残りに致命的な影響を与えます。「思ったより消耗した」で40km地点を迎えたら、もう終わりです。
実際、私が今回走り抜いたCOROSのGPSデータでも、途中で電池が切れてしまいましたが、累積上昇は「2,150m」という超ド級の数値をマーク。
これだけのアップダウンを走りながらクリアするということは、常軌を逸したタフさを要求されることを意味しています。
数字を見るたびに、あの100kmが嘘ではなかったと実感します。
※電池が途中で切れた、私の実測
前半の林道急登、50km以降の標高ドロップ、そして71kmからの馬越峠がランナーを仕留めにかかります。
牙を剥く「灼熱」と「急激な内臓疲労」のリアル
そして、このコース最大の地獄は高低図に現れない寒暖差による内臓のシャットダウンです。早朝5時前の凍えるような極寒からスタートし、50kmを過ぎて標高が下がると、今度は一転して直射日光が照りつける灼熱のロード区間へと突入します。
この激しい気温変化と、走る振動で胃が揺さぶられ続けることにより、胃腸機能は完全に麻痺します。
一度熱中症や深刻な内臓疲労に捕まると、サブエガの実力を持つランナーですら、平坦な道や緩やかな下り坂、果てはキロ7分ペースですら激しい吐き気とふらふらに襲われ、一歩も走れなくなる状態まで追い詰められます。
「走れば吐く、歩くのすらふらふらで、何度もリタイアの文字が頭をよぎる」
これこそが、全国から集まったウルトラランナーの4人に1人以上が無念の涙をのむ、完走率57%の本当の恐ろしさなのです。
だからこそ、この野辺山を生き抜くためには、根性論ではなく、完璧なリスクマネジメントを施した「装備の準備」と、プライドを捨てて歩きを許容する「大人の撤退的(前進)ペース戦略」が絶対に不可欠になります。
スタートラインに立つための必携装備チェックリスト
野辺山で脱落するランナーの多くは、準備の段階ですでに負けています。装備の不足が脱水や体温低下を招き、胃腸トラブルが脚よりも先に止まる。物理的な装備と医薬品プロトコルを、レース前に完璧に整えておくことが完走への第一歩です。
1つでも欠けると、後半で取り返しのつかない事態になる可能性があります。
- マイボトル・マイカップ:エイドに紙コップは一切ありません。水分補給はマイボトルが命綱です。
- 計測タグ:靴ひもへの固定が必須。装着位置を間違えると記録が残りません。
- ライト類(ハンドライト・ヘッドライト):早朝5時前のスタートと暗がりに備え、両方用意しましょう。
装備の中でとくに重要なのがシューズ選びです。
序盤に15kmの砂利道(林道)があるため「トレラン用シューズが有利」と思いがちですが、コースの大半は舗装路。クッション性の高いロードシューズの方が後半に脚が圧倒的に残ります。砂利道は「脚を温存する区間」と割り切って、ゆっくり走ればいいのです。
胃腸と痛みの事前プロトコル — 「脚より先に胃が止まる」
医薬品については、ウルトラの格言を覚えておいてください——「脚が止まる前に、胃が止まる」。実際、私が今回最も苦しめられたのも、脚よりも先にやられた胃腸でした。
胃腸管理はガスター10の定期服用が鉄則です。スタート前に1錠、その後4時間おきに1錠。水なしで飲めるタイプをポケットに常備しておきましょう。
鎮痛剤(ロキソニン等)は馬越峠の頂上に着く1時間前(登りの中腹付近)で服用するのがプロの戦略です。痛みが来てから飲んでは遅い。先回りのケアが、終盤の失速を防ぎます。
装備と医薬品のプロトコルを完璧に整えること——それが、完走率57%の壁を越えるための最初の、そして最も確実な一歩です。
野辺山ウルトラマラソンのコース攻略と高低差解説
数字以上に心肺と関節をジワジワと破壊する、アップダウンだらけの100kmコースプロフィールです。
全6関門の位置と関門通過距離を頭に入れておくことが、関門落ちを防ぐ第一歩です。
【お宝データ配布】スマホで見られる「自作Googleマイマップ」&「GPXナビデータ」
「公式のコースマップだけだと、いまいちエイドや関門の具体的な場所、周辺道路の状況がわかりづらい……」そんな悩みを解決すべく、私が実際にレース前後のシミュレーションに活用し、命を救われた「特製Googleマイマップ」を公開します!
以下のリンクをスマホでタップすると、ご自身のGoogleマップアプリに野辺山100kmの全エイド・関門・激坂攻略ポイントがピン留めされたマップが同期され、いつでも瞬時にGPSで現在地と照らし合わせながら確認できるようになります。
事前準備はもちろん、当日スマホを携帯して走る方の強力な武器になること間違いなしです!
さらに、カロス(COROS)やガーミン(Garmin)、スマートウォッチにコースデータを直接取り込んでナビゲーションさせたい方のために、今回の2026年最新コースに対応した「GPXナビゲーションデータ」を無料で配布します!
これをお手持ちのウォッチアプリ(COROSアプリやGarmin Connectなど)に取り込むだけで、走行中に時計の画面上で「次のエイドまであと何キロか」「いま正しいルートを走っているか」が視覚的にナビゲーションされます。
極限状態でのルートロストを防ぎ、精神を安定させるための「最強のお守り」としてご活用ください。
これをお手持ちのウォッチアプリ(COROSアプリやGarmin Connectなど)に取り込むだけで、走行中に時計の画面上で「次のエイドまであと何キロか」「いま正しいルートを走っているか」が視覚的にナビされます。
極限状態でのルートロストを防ぎ、精神を安定させるための「最強のお守り」としてご活用ください。
野辺山の100kmは、一本の壮大なサバイバルストーリーそのものです。
しかし、美しい八ヶ岳の稜線、川上村ののどかな田園風景を堪能できる裏には、極めて精密に罠が張り巡らされています。
実際にこのコースで熱中症と深刻な内臓疲労を患い、文字通り這うように完走したランナーのリアルな視点から、各セクションの攻略法と注意すべき急所をお伝えします。
野辺山ウルトラマラソンコースの高低差・獲得標高
- スタート地点標高:1,355m(最初からすでに過酷な高地環境)
- コース最高地点:1,908m(10km〜25km付近の南八ヶ岳林道内)
- コース最低地点:880m
- 公式累積標高:2,000m超(実測での累積上昇は約2,400m相当)
今回の私のCOROS実測データでも累積上昇は驚異の「2,150m」を記録。
※電池が途中できれたデータです(96.27kmまで)
この驚異的なコース高低差がもたらす最大の罠は、前半の「グラベル林道」と後半の「馬越峠」という明確な牙だけではありません。
【第一の牙】10km〜25kmに及ぶ「未舗装の砂利道林道(南八ヶ岳林道)」
標高1,355mからコース最高地点1,908mへと急上昇するこの15kmに及ぶ区間は、路面が荒れた強烈なグラベル砂利道です。舗装路と違い、一歩ごとに足底が砂利の上で不規則に滑り、足首、膝、股関節、そしてそれを支える大腿四頭筋に絶え間ない関節破壊ダメージが蓄積され続けます。
ここで無茶をして設定ペースを上げると、関節のクッションが死に、後半の舗装路に出たときに激しい筋肉の痙攣や運動能力の完全喪失を引き起こす引き金になります。
今回の私もこの林道区間は「絶対に脚を残す、無理に走らない」と決めていましたが、それでも蓄積された着地衝撃は、後半の走りを大きく苦しめました。
【第二の牙】71km〜立ち塞がる標高差490mの壁「馬越峠」
71km地点から立ち塞がる、野辺山ウルトラ最大のボスが「馬越峠(最高標高1,620m)」への登り坂です。標高差490m・平均斜度10%のえんえんと続く激坂は、それまでにボロボロになった大腿四頭筋に無慈悲にトドメを刺しにきます。
すでに熱中症と内臓不調でふらふら、キロ7分ペースはおろか坂道を少し走るだけで強烈な吐き気がこみ上げてくる私にとって、ここはまさに限界寸前の地獄の坂でした。
「これ以上走ったら吐く、走れない、立っていられない…」
何度もリタイアが頭をよぎるなか、私はエイドで長めにしっかりと休憩を取り、胃腸と脳を落ち着かせる戦略をとりました。
そして馬越峠の登りは1ミリも走るのをやめ、「大人の戦略的な全歩き(ウォーク)」に完全にシフトしました。
【第三の牙】2025年コース変更「遠ざかるゴールの罠」
さらに注意が必要なのが、2025年に行われたルート変更(馬越峠以降)です。馬越峠への急登ルートを一部短縮した代わりに、馬越峠を抜けた後のラスト20kmにわたる平坦・微起伏区間が延長されました。
これが本当に精神を破壊します。
アリーナのアナウンスやゴールの歓声が遠くに聞こえる距離まで近づいているのに、コースはゴール会場を避けるように大きく大外を延々と迂回し、微起伏を5〜6kmも遠回りさせられるのです。
「目の前にアリーナが見えているのに、なぜまだゴールできないんだ…!」
今回の私は、ほぼほぼ歩くようなヘロヘロのウォークとスロージョグを繰り返し、頭の中で「14時間の制限時間」を何度も計算し直しながら、一歩ずつ泣きながら足を進めました。
3フェーズ別完走戦略 ─ 序盤温存・馬越峠490m全歩き・終盤メンタル
野辺山の100kmは、大きく3つのフェーズに分けて考えるとシンプルになります。フェーズごとに動き方を変えることが、14時間を戦い抜く唯一の方法です。
【Phase 1:0〜50km】「脚を残す」ための序盤戦
最初の50kmで犯す最大のミスは「飛ばしすぎ」です。序盤はコースが景色のよい高原で、気分が上がって自然とペースが上がりやすい。だが1,500m超の高地では酸素消費量が平地より高く、体は実感より多くのエネルギーを消耗しています。
砂利道区間は歩幅を狭め、リズムを刻む。「速く歩くスキル」を磨きましょう。歩くことは休憩ではなく、目的を持った前進です。
また50km地点で標高が下がると急激に気温が上がります。スタート時の冷え込みを忘れて熱中症になるランナーが多い。早めの水分補給と暑さ対策への切り替えを意識しましょう。
ブレーキ技術と下りの使い方が、脚の残りを決定づけます。
【Phase 2:50〜71km】タイムバンクを構築する忍耐区間
中盤は精神的にいちばん辛い区間です。北相木村の往復区間ではランナー同士がすれ違います。自分のペースが遅いと感じても、ボリュームゾーンにいる証拠なので惑わされないこと。
この区間での目標は「時間の貯金を作ること」です。エイドで1分ずつ効率的に補給を済ませれば、トータルで30分近い余裕が生まれます。エイドは休憩所ではなく補給所という意識を持って、手早く済ませて前へ進みましょう。
エイドの効率化がここでの最大の武器になります。
【Phase 3:71〜100km】ラスボス「馬越峠」と終盤の心の戦い
71kmから始まる馬越峠が野辺山最大の難所です。標高差490m・平均斜度10%の激坂が牙を剥きます。ここでのルールはシンプル——「全歩きを完全に許容しろ」。
ただし、だらだら歩くのではありません。腕を振り、前傾姿勢で「攻めの歩き」を貫く。峠の頂上エイドに着いたら、鎮痛剤が効いているか確認し、脚を少し休ませてから下りに備えましょう。
頂上エイドで脚を完全に休ませてから下りへ。焦りは禁物です。
ゴール会場の声が聞こえてきても、実際にはまだ5〜6km残っていることがあります。「あと2km!」という沿道の声は信じるな——2025年のコース変更でこの罠はさらに深くなっています。根性論で一歩ずつ刻み続けることだけが答えです。
2025年コース変更後は特に注意。最後の最後まで距離感を信じないこと。
「野辺山そば」の出汁、シャキシャキのレタス、甘納豆——これらは栄養補給以上に、脳を「まだいける」と錯覚させる特効薬です。
エイドの名物を楽しむ余裕が、完走への燃料になります。
完走を死守するタイムシミュレーション
完走するための「絶対死守ライン」を数字で把握しておくことが、焦りを防ぐ最大の武器です。以下の3チェックポイントを頭に刻んでおきましょう。
峠の頂上で残り3時間しかなくても諦めないこと。ここから駆け下りれば可能性はあります。「奇跡の3時間」と呼ばれる所以です。
筆者の補給3選(パスタ・果物・電解質飲料)も参考にしてみてください。
野辺山ウルトラマラソンの思い出と意気込み
私にとってウルトラマラソン(100km)の世界における究極の金字塔、それこそが「サブテン(10時間切り)」の達成です。そしてその悲願を果たすための本命レースとして、私は福島県で開催される「会津磐梯山ウルトラマラソン」をターゲットに定め、果てしない練習を積んできました。
しかし、超長距離レースを攻略するうえで、避けては通れない最大の壁があります。
それこそが、ランナーの走力を根こそぎ奪い去る「直射日光と過酷な熱ストレス」です。
会津磐梯山ウルトラマラソンが開催される6月中旬は、ちょうど本格的な梅雨入り前の厳しい日射に見舞われる季節。
特に後半の60km地点を過ぎてからの猪苗代湖畔沿いのロードは、遮るものが一切ない炎天下の中、20km以上も熱を蓄えた硬いアスファルトの上を走り続ける過酷なレイアウトが待ち受けています。
最高気温が20℃を少し超えただけでも、日陰のない湖畔の輻射熱は体感温度を跳ね上げ、急激な脱水や深部体温の上昇を引き起こすのです。
「暑さに滅法弱い僕が、炎天下の会津でいきなりサブテンを狙うのはあまりにもリスクが高すぎる…」
そう直感した私は、戦略的にエントリーを前倒しすることを決意しました。
「それならば、5月開催で、スタート時点で標高1,350m以上の冷涼な高原地帯を走る野辺山こそ、暑さを回避して走力を研ぎ澄ます最高のステップになるのではないか?」
この計算と「会津への執念」こそが、僕をあの過酷な野辺山のスタートラインへと押し上げた本当の理由でした。
ところが、自然の神様はそう甘くはありませんでした。
高原だから涼しいだろうという僕の予測を嘲笑うかのように、野辺山ウルトラマラソン(第32回大会)では、予想を遥かに超える強烈な直射日光がランナーを襲いました。
前半の砂利道グラベルで足首と大腿四頭筋を激しく痛打され、中盤のロード区間では激しい脱水と急激な内臓疲労(熱中症)が直撃。
坂道はおろか、キロ7分ペースでの緩やかなジョグですら、内臓が完全に機能を停止して激しい吐き気とふらふらに襲われ、まっすぐ立つことすら困難な状態にまで追い詰められました。
「もう走れない、これ以上一歩でも進んだら確実に吐いて倒れてしまう…」
リタイアを告げる関門収容バスが頭をよぎり、心がポッキリと折れかけた瞬間は、一度や二度ではありませんでした。
しかし、会津磐梯山でのサブテンを夢見て流した血の滲むような練習の日々、そして「ここで諦めたら、本命のスタートラインに立つ資格すら失う」というランナーとしてのプライドが、死にかけた僕の身体をエイドの度に何度も何度も奮い立たせました。
エイドでしっかりと長めの休憩を取り、冷水で首筋を冷やし、ほぼ全歩きの超省エネウォークで馬越峠の激坂を乗り越えたのは、まさにこれまでの経験を総動員した「執念の戦略的撤退(前進)」でした。
這いつくばってでもゴールした、ボロボロで誇らしい1枚です。
これまでにない果てしない達成感と安堵感で、目元が熱くウルウルと震えるのを止めることができませんでした。
「この地獄の野辺山を、ボロボロになりながらも這いつくばって完走できた。この粘り強さがあれば、僕はもっと強くなれる。」
今回の泥臭い完走は、僕のウルトラランナーとしての魂を確実にワンランク上のステージへと引き上げてくれました。
この野辺山での深い反省と過酷な経験をすべて次の糧に変え、私は必ずや、あの美しい磐梯山の麓で「サブテン」の栄光を掴み取って見せます!
100kmを走り抜いたとき、あなたは「どんな困難も乗り越えられる自分」に出会えるはずです。
▶ 【徹底比較】野辺山と会津磐梯山、走るならどっち?
累積標高・路面特性・熱中症リスクなど、山岳ウルトラの双璧を20項目で完全検証した比較分析記事を現在作成中です。公開を楽しみにお待ちください!
【実録】第32回野辺山ウルトラマラソン(2026)|準備・挑戦・結果
スタート前:装備・目標・補給戦略
「同じ100kmの山岳ロードレースだし、累積標高や難易度も会津磐梯山ウルトラと同じくらいだろう」そう高をくくっていたスタート前の私を、今すぐ全力で殴ってやりたい。
結論から言いましょう。野辺山ウルトラマラソンは、会津磐梯山と比べて「1.5倍キツい」極悪非道なコースでした。
本命レースである「会津磐梯山でのサブテン(10時間切り)」に向け、暑さを避けて高原地帯で涼しく足を作ろう、などという甘い目論見は、スタート地点に立った時点で音を立てて崩れ去ることになります。
スタートはまだ凍えるような寒さが残る午前4時55分。
勝負服はイエローのタンクトップ(Bib No.1592)を着用し、いざWAVE Aからサバイバルのスタートラインへ。
目標は「完走」はもちろんのこと、本命へ繋げるための力強い走りを刻むこと。
補給食には胃薬の定期服用プロトコルを忍ばせ、冷涼な空気のなか、八ヶ岳の麓へ飛び出しました。
この時はまだ、その後に待ち受ける灼熱と内臓疲労の絶望を知る由もありませんでした。
レース展開:走行中の出来事とゴールまで
午前4時55分、澄んだ高原の空気に号砲が響き渡りました💨最初の10kmは57分27秒と、高地環境を意識した極めてスムーズな滑り出し。
ここで、私が走りながら撮影した第32回野辺山ウルトラの絶景ハイライト動画を公開します!
言葉だけでは伝わらない、八ヶ岳の圧倒的な美しさと、ランナーの関節を容赦なく破壊しにくる荒れた砂利道(林道)のリアルな雰囲気を、まずは14分の臨場感溢れる映像で体感してみてください!👇
動画の通り、最高地点1,908mへ向かう「南八ヶ岳林道」の砂利グラベルに入った瞬間から、不規則に足を滑らせる路面に大腿四頭筋がジワジワと悲鳴を上げ始めました。
20km通過(ラップ1時間12分59秒)、30km通過(ラップ1時間02分36秒)とゲームプラン通りに淡々と走りを刻みます。
しかし、林道を抜けて標高が一気に下がった40km手前、本当の地獄が口を開けました。
高原とは思えない強烈な直射日光が容赦なく降り注ぎ、気温が急上昇。
激しい寒暖差と着地振動により、私の胃腸が完全にシャットダウンしたのです。
40kmのスプリットは1時間20分42秒へと急転直下。
激しい熱中症の症状と内臓疲労が襲いかかり、坂道を走ったり、ペースをキロ7分あたりに上げただけでも、激しい吐き気と目の前がクラクラするふらふら感に襲われ、まともに直立することすらできなくなりました。
「これ以上走ったら、その場で吐き崩れて倒れてしまう……」
目の前を横切るリタイアランナー回収バスを見るたび、心が何度も折れそうになり、リタイアの四文字が頭を無限に支配しました。
しかし、「ここで諦めたら、会津磐梯山のスタートラインに立つ資格すらない」と歯を食いしばり、必死の防衛戦略に切り替えました。
エイドに着くたびに長めの完全休憩をとり、水分を首筋に当てて深部体温を下げ、胃を落ち着かせることに全力を注ぎました。
71kmから立ち塞がるラスボス「馬越峠」では、走ることを一切放棄し、「大人の戦略的な完全ウォーク(全歩き)」を徹底。
1ミリも走らず、前傾姿勢で攻めの早歩きを貫き、80kmの計測ポイントを2時間07分33秒かけて泥臭く突破しました。
しかし、最後の最後に2025年コース変更の罠「遠ざかるゴールの絶望」が襲いかかります。
ゴール会場の体育館のアナウンスがすぐ耳元に聞こえるのに、コースは無慈悲にゴールを避けて大外を大きく迂回。
「なぜまだゴールさせてくれないんだ!」と泣き言を漏らしながら、ヘロヘロのジョグとウォークを繰り返し、残り時間を1秒ずつ削りながら前進し続けました。
そして……!
「13時間43分22秒」の数字が、あの一日の重さをすべて物語っています。
100km男子の完走率はなんと「57.09%」という文字通りのサバイバルレース。
出走した2,067人のうち、ほぼ半数がリタイアした極限のコンディションの中、プライドを捨てた粘りの歩きで完走メダルをもぎ取った感動は、一生忘れることはありません。
速さではなく「止まらなかったこと」が、この記録のすべてです。
【ラップ全記録】区間スプリットで振り返る熱中症との100km
ここからは、計測ポイントごとのスプリットタイムと区間ラップを使って、100kmのレースがどこで、なぜ崩れたのかを客観的なデータで振り返ります。完走証や記憶ではなく「数字」を並べると、熱中症と内臓疲労がどれほど残酷にペースを奪っていったかが、はっきりと浮かび上がります。
10kmごとのラップを並べると、40km以降のペース崩壊が一目で分かります。
0〜30km:高地グラベルでも刻めていた「順調な前半」
最初の10kmは区間ラップ57分27秒、キロ約5分45秒。
10〜20kmはラップ1時間12分59秒(キロ約7分18秒)と一気に落ちますが、これは想定内です。標高1,908mへ駆け上がる南八ヶ岳林道の砂利グラベル区間で、ここは「脚を残す」と決めて意図的にペースを抑えた区間でした。
30〜50km:40kmで熱中症発症、吐き気でペースが上がらない
異変が数字に現れたのが30〜40kmのラップです。1時間20分42秒(キロ約8分04秒)——30kmまでの好調から一転、いきなり1区間で18分も遅くなりました。
原因ははっきりしています。林道を抜けて標高が下がった40km手前で、高原とは思えない強烈な直射日光と急激な気温上昇に直撃され、熱中症と内臓疲労が発症したのです。
走る振動で揺さぶられ続けた胃腸は完全に麻痺。坂道を走ったり、ペースをキロ7分あたりまで上げただけで、激しい吐き気と目の前がクラクラするふらふら感に襲われ、「上げたくても上げられない」身体になってしまいました。
40〜50kmのラップは1時間04分26秒(キロ約6分27秒)と一見回復しているように見えますが、これは下り基調の地形に助けられた数字です。エイドで首筋を冷やし、胃を落ち着かせる完全休憩を挟みながら、なんとか食らいついていた区間でした。
50〜80km:馬越峠で2時間07分、完全ウォークへの戦略転換
50〜60kmはラップ1時間17分58秒(キロ約7分48秒)、60〜70kmは1時間36分44秒(キロ約9分40秒)。数字が示す通り、内臓疲労が回復しないまま、ペースはじりじりと落ち続けます。走れば吐き気、歩いてもふらふら——進む手段そのものが削られていく区間でした。
これは71kmから立ち塞がる標高差490m・平均斜度10%の馬越峠を、1ミリも走らず完全ウォークで越えた区間。吐き気でこれ以上走れない以上、無理に走ってリタイアするより、前傾姿勢の「攻めの早歩き」で確実に前進する——その大人の戦略転換が、この10kmの数字に刻まれています。
80〜100km:「遠ざかるゴール」を1秒ずつ削った執念のラスト
80〜90kmはラップ1時間29分57秒(キロ約9分00秒)、90km〜フィニッシュは1時間33分00秒(キロ約9分18秒)。馬越峠を下りたあとも、2025年のコース変更で延長された「遠ざかるゴールの罠」が待っていました。
ゴール会場のアナウンスが聞こえているのに、コースは大外を5〜6kmも迂回。ヘロヘロのジョグとウォークを繰り返し、頭の中で14時間の制限時間を何度も計算し直しながら、残り時間を1秒ずつ削って前進し続けました。
COROSの実測でも距離96.27km・累積上昇2,150m・平均心拍137bpm。
数字を並べて分かるのは、このレースが「速さ」ではなく、熱中症で崩れた身体をいかに止めずに前へ運び続けたかの100kmだった、ということです。歩いてでも、吐きそうでも、関門の手前で進み続けた——その積み重ねが、完走率57%の壁の内側に残った理由でした。
りんごちゃん
熱中症で吐き気が出ても、リタイアせずに歩いてゴールしたんだね…!ラップの数字を見ると、40kmからずっと苦しかったのが伝わってきて、なんだか胸が熱くなっちゃった。
バナナぴろし
野辺山は「速く走る」レースじゃなく、「止まらずに前へ進み続ける」レースなんだ。装備・フェーズ戦略・タイムシミュレーションを準備しておけば、完走率57%の壁はきっと超えられるよ。バナナぴろしは次こそ、本命の会津磐梯山でサブテンを掴みにいく。その挑戦も、またこのブログで報告するから楽しみにしていてね!


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