カーボンシューズはウルトラマラソンに本当に必要なのか?
Zoom Fly
6(ナイキの厚底カーボン)を履いて、75kmのウルトラマラソン「みなの天空75K」を完走してきました。
レース後に残ったのは、左足首と股関節の強い痛み──。
「推進力の武器」とされるカーボンプレートが、長時間走では“負担”になる場面もあると感じました。
この体験を通して、カーボンシューズがウルトラに合う条件・合わない理由を、50代サブエガランナーの実感としてまとめました。
これからウルトラで厚底カーボンを履こうか迷っている方の判断材料になれば幸いです。
みなの天空75Kを完走!レース後の痛みとカーボンの影響を検証する
左足首・右股関節・内ももが痛い…これってフォーム?シューズ?
ウルトラマラソン×カーボンシューズの落とし穴──それは「終盤の痛み」として表れました。
今回、Zoom Fly
6(カーボンプレート入り厚底)を履いて「みなの天空75K」を完走したあと、左足首・右腸腰筋・内転筋(内もも)に強い痛みが出ました。
同じロードコースを走ったにもかかわらず、左右で大きなダメージ差が出たのです。
これが「カーボンシューズによるフォームへの影響」なのか?
それとも「筋力バランスの問題」か?
以下に、部位別のダメージと要因を整理してみました。
みなの天空ウルトラマラソンの記事はこちら
バナナぴろし
もっと知りたい方はこちら:
【2025みなの天空75K】ウルトラマラソン中に復活できた理由とは?痛みと“脳のブレーキ”の正体を解説-バナナぴろし流のマラソンブログ
山岳ウルトラマラソン「みなの天空75K」での著者のレース展開と、後半で身体・心・脳がどのように“復活”したかを解説しています。
特に気になったのがこの症状です👇
- 左足首がかなり痛い(捻った感じではない)
- 右腸腰筋と内転筋群に鈍い痛み(脚を上げると辛い)
- 階段の昇降・跨ぎ動作がきつい(特に下りが地獄)
レースはすべてロード、シューズはZoom Fly 6(厚底×カーボン)。
登山道などの不整地は一切なく、カーボンシューズの特性がフルに反映された条件でした。
ではなぜこのような左右差のある痛みが出たのか?
以下に筋肉別の分析をまとめます。
【部位別分析】痛みの正体は“偏ったオーバーユース”か
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🔻左足首(前・内側が特に痛む)
👉 カーボンソールの反発と硬さにより、接地の安定を小さな筋肉で支え続けた結果、炎症が起きた可能性大。
内反・外反の微調整を腓骨筋・後脛骨筋・前脛骨筋がカバーしきれず疲労。 -
🔻右腸腰筋(股関節屈曲時に痛み)
👉 フォームの崩れや左右差で、右脚の振り上げ動作を腸腰筋が代償的に頑張りすぎたと考えられる。
ロード特有の一定リズムが、疲労を片側に蓄積しやすい。 -
🔻右内転筋(内ももの張り・突っ張り)
👉 着地ブレを抑えるために、内転筋が股関節の安定を担わされた。腸腰筋との“ペア疲労”が典型的。
つまり、これは「ケガ」ではなく、カーボンシューズ×ロード×左右差フォームが生んだオーバーユースの蓄積と見てよさそうです。
✅まとめると、こんな因果関係が考えられます👇
- Zoom Fly 6の反発 → 接地安定筋の酷使 → 左足首に集中
- フォームの左右差 × 出力の偏り → 右腸腰筋と内転筋がオーバーワーク
- トレイルなし・全ロード → 衝撃分散されず一方向に蓄積
次章では、この痛みからどうリカバリーすべきか?
そして「カーボンシューズを使いこなす」ために必要な視点を、実体験から掘り下げていきます。
ウルトラマラソンにはカーボンは不向き?Zoom Fly 6で見えた課題
「反発力=正義」とは限らない。100kmでは“弱点”になることも
厚底カーボンシューズ──マラソン界では定番となった装備ですが、100km級のウルトラマラソンでは、必ずしも“味方”になるとは限りません。
今回Zoom Fly
6を履いてみなの天空75Kを完走した筆者も、レース後に左足首や股関節周りに痛みが集中。
その背景には、カーボンシューズの構造的な弱点が見え隠れしていました。
ナイキ ズーム フライ 6 (NIKE ZOOM FLY 6)
・品番:FN8454‑402(カラー:グレイシャーアイス/ハイパーピンク/グリーンショック/ブラック) ・重量:約265 g(メンズサイズ28 cm) ・ドロップ(ヒール‑つま先の落差):8 mm ・アッパー:合成皮革+通気性あるメッシュ/軽量ウーブン生地 ・ミッドソール:ZoomX フォーム+フルレングスのカーボンファイバー製 Flyplate(カーボンプレート) ・アウトソール:薄型軽量ラバーでグリップ性強化 ・用途:ロードレース/トレーニング兼用。サブ3.5ランナーにも対応可能なレーシング仕様にアップデートされたモデル。
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🔍 カーボンの特性がウルトラに“合わない”理由
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① 剛性が高すぎて足首に負担集中
厚底×カーボンプレートの高い剛性は推進力を生み出す反面、足首の自由な動きを制限します。
結果として、接地の微調整や安定性をすべて足首周りの細かい筋肉に任せることになり、長時間のロードで炎症や痛みが発生しやすくなります。 -
② 股関節の可動域が“プレート”に邪魔される
終盤に疲労が蓄積してくると、プレートをしならせる力が出せなくなるため、体を無理に前方へ倒す動きが発生しがちです。
これが腸腰筋や内転筋群への負荷増加を招き、股関節痛の原因に。 -
③ 高スタック+剛性=不安定な接地
Zoom Fly 6はスタックハイト(ソールの厚さ)が非常に高く、それが横ブレ時の不安定さを生みます。
特にウルトラのようにフォームが崩れやすい終盤では、わずかな着地のズレが足首・膝・股関節へ連鎖的にダメージを及ぼします。
これらの特徴は、筋力やフォームが整ったフルマラソンの上級者にはメリットが大きい反面、ウルトラ距離・年齢層・疲労レベルによっては、むしろ「履きこなすためのリスク」になります。
実際、厚底カーボンシューズの普及以降、股関節周囲の疲労骨折や痛みの報告が急増しているという研究もあります。
🩹 適性判断と対策:どうすれば“履ける”ようになるのか?
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✔ カーボンを使いこなすには「筋力」と「フォームの安定」が前提
ふくらはぎ・ハムなど主働筋だけでなく、中臀筋・腸腰筋・体幹など安定筋の強化が必要です。
これらの筋力がないと、推進力を生かすどころか、反発に振り回されて終わる可能性があります。 -
✔ 事前にカーボンでロング走をして“慣れ”を作る
カーボンシューズは、「履いたら速くなる」ではなく「慣れたら生かせる」シューズ。
レース前に20km〜30km以上のロング走で感覚をつかんでおくのが重要です。 -
✔ 合わないならクッション性重視 or 安定型にシフト
フォームに不安がある人や、100kmを“無理なく完走したい”場合は、Rival Flyなどの低反発で安定性のあるモデルのほうが安心感があります。
筆者も今回、Zoom Fly
6で終盤に脚を使い切ってしまい、フォーム維持が困難になりました。
履きこなせたとは言いがたく、「使いどころを間違えると大きな代償を払う」と実感しています。
「カーボン=最強」ではなく、「自分の身体に合う装備」こそが最強。
ウルトラマラソンでこそ、その原則を忘れてはいけません。
ピッチ型フォームとカーボン|“重く感じる理由”と後半で噛み合った瞬間
序盤はブレーキ、終盤はブースト。カーボンとの関係性は出力次第
ピッチ走法でウルトラを走るランナーにとって、カーボンシューズが「重く感じる」のはよくある現象です。
実際、今回のZoom Fly
6でも序盤は脚の動きにブレーキをかけているような感覚があり、「合ってないかも…」という不安を抱えながら走っていました。
原因は明確で、カーボンプレートの反発が働く速度域と、自分のフォーム・出力が噛み合っていなかったからです。
ウルトラ序盤の6:30〜6:45/kmでは、Zoom
Flyのプレートはほぼ反応していない状態。
クッション性は感じるものの、沈まない・跳ねない・推進力が得られないという中途半端な着地感が脚の疲労をじわじわ蓄積させていきました。
しかし、終盤──A9地点を越えたあたりから、リズムを少し上げてみた瞬間、フォームとZoom
Fly 6の“波長”が合ったような感覚がありました。
ピッチが168→172へと自然に上がり、ペースも5:40/km台へと回復。
そのとき、初めてZoom Flyのカーボン反発が「前へ押し出してくれる力」として体感できたのです。
つまり、「重い」と感じたのはシューズの問題ではなく、自分の出力がシューズの“活性ゾーン”に届いていなかっただけ。
カーボンシューズは、ラクをさせてくれる道具ではなく、一定以上の出力を出せばブーストしてくれる武器なのだと実感しました。
フォームが小さく・ピッチ型の50代ランナーでも、後半に向けて出力を上げる設計ができれば、カーボンの恩恵は十分に得られる。
大切なのは、「合わない」と切り捨てる前に、シューズと自分のフォーム・出力との関係を丁寧に観察することなのかもしれません。
結論:ウルトラマラソンにカーボンは“使うべき”なのか?
シューズ選びで決まる「その日のベスト」──リスクと可能性の天秤
ウルトラマラソンでは、「速く走る」よりも最後まで動けることのほうが価値になります。
だからこそ、カーボンシューズを履くかどうかは、“出したい成果”と“自分の走り方”に合っているかで判断すべきです。
ひろが走った「みなの天空」では、カーボンシューズ(Zoom Fly 6)が後半のペースアップ時に“追い風”になった瞬間がありました。
しかし同時に、上りの筋肉負担・終盤の足首の痛みというリスクも明確に出たレースでした。
結論として、カーボン=使うべき/使わないべきという二択ではなく、使い方に戦略が必要な道具だということです。
カーボンを使うなら「条件」と「準備」がすべて
カーボンシューズには反発ゾーンと呼ばれる、推進力を得やすい速度レンジがあります。
Zoom
Flyのようなモデルはキロ5分台〜4分台でその性能を発揮しやすいですが、ウルトラの抑えたペース(5:50〜6:30/km)ではその反発を十分に引き出せません。
また、ウルトラ後半では足首や股関節の可動域が減り、フォームも小さくなるため、プレートが邪魔になりやすいという落とし穴もあります。
結果、「ただ硬くて重い靴を履いているだけ」の状態に陥りやすく、脚の小筋群への負担増やフォーム崩れのリスクが高まります。
ライバルフライ vs カーボンの比較と選択基準
| シューズ | 安定性 | 推進力 | リスク | ベスト更新の可能性 |
|---|---|---|---|---|
| ライバルフライ4(新品) | ◎ | ○ | 低い | 高い(堅実に) |
| カーボンシューズ(Zoom Fly等) | △ | ◎ | 高い | 条件が揃えば最速 |
結論:「今のベスト」にはライバルフライ、「未来のベスト」にはカーボン慣れ
51歳という年齢の「無理せず、その日のベストを出したい」という姿勢をふまえると──
現時点でのウルトラ本番にはライバルフライ4(新品)が最適です。
ただし、将来的にカーボンの恩恵を受けられるように、練習の中で少しずつカーボン慣れを進めるのがベスト。
例えば、ロング走の終盤10kmだけZoom Flyに履き替える、坂インターバルをカーボンで実施するなどで、カーボンを扱える脚を育てていきます。
そうすれば来年も、再来年も──「今のベスト」と「未来の最速」の両方を追いかけることができます。
ウルトラは、天候も、コースも、脚の調子もコントロールできない。
でも、シューズ選びと身体の準備だけは、自分の意志で決められる。
その選択こそが、ゴールに笑顔で立てるかどうかを決める「分かれ目」になるのです。

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