後半に足が止まる「30kmの壁」の正体を、乳酸・LT値・エネルギー理論から完全解説します。
前回ウォークブレイクで失敗したよね。次はどう立て直したの?
本気で「30kmの壁」の正体を調べたんだ。そしたら衝撃の事実が分かった。後半に足が止まるのは、根性不足でも走り込み不足でもなかったんだよ。
カギは「乳酸閾値(LT値)」じゃ。走るスピードがこのラインを超えると、エネルギーが脂質から糖質中心に切り替わり、乳酸が大量発生して糖が一気に枯渇する。すると速筋が動かなくなり、足が止まる。つまり必殺技はウォークブレイクではなく、「乳酸を溜めずに42.195kmを走り切れるペースを把握し、その速度で走れる身体を作ること」なのじゃ。
そう。今日は、30kmの壁の正体を乳酸とLT値から徹底解説して、佐倉の失敗をデータで分析。そして答えにたどり着いた「芝生ランニング」で、柏の葉フルを3時間1分57秒までPB更新した話までするよ。
フルマラソン後半、心拍には余裕があるのに、なぜか足だけが動かなくなる。いわゆる30kmの壁を前に、「もっと走り込めば解決するはず」――そう考えたことはありませんか? 実は、フルマラソン後半の失速は、根性不足でも走り込み不足でもありません。原因は、エネルギーの使い方と乳酸閾値(LT値)、そしてペース設定にあります。
本記事では、佐倉朝日健康マラソンでウォークブレイクを試して撃沈した実体験をもとに、「なぜフルマラソン後半で足が止まるのか?」を、糖質・脂質のエネルギー理論と乳酸(LT値)の観点から徹底的に解説します。結論から言うと、フルマラソンでタイムを狙う必殺技はウォークブレイクではありません。乳酸を溜めずに42.195kmを走り切れるペースを把握し、その速度で走れる身体を作ることです。さらに、その答えに辿り着くきっかけとなった芝生ランニングによるランニングエコノミー改善と、そこからの大幅PB更新までをまとめています。
失敗を理論で解き明かし、答えにたどり着いた一章。ここからサブスリーまで、残り233日です。
30kmの壁とは?フルマラソン後半で足が止まる本当の原因
30kmの壁とは、フルマラソン後半に心拍ではなく脚が先に限界を迎える現象です。フルマラソンで足が動かなくなる経験は、俺のマラソン人生における大きなターニングポイントになりました。この記事を読んでいるあなたも、フルマラソン後半で突然ペースが落ちた経験があるのではないでしょうか。
心拍は余裕があるのに、足だけが動かない。この感覚、かなり厄介です。そうなると、多くのランナーはこう考えます。
- ① 足が出来ていない → もっと走ろう
- ② スタミナ不足 → もっと走ろう
だから月間走行距離を増やそう――この思考、かなり「あるある」です。正直に言うと、俺もまったく同じ考え方でした。ただ、何度も同じ失敗を繰り返す中で、「足が終わる」とは一体何が起きているのか? そこを本気で調べるようになりました。調べたテーマは、エネルギーの使われ方と筋肉の種類です。
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筋肉のタイプ(速筋・遅筋・中間筋)と乳酸の関係から、フルマラソンの持久力アップや「30kmの壁」克服のヒントを解説しています。
速く走るためには速筋の働きが不可欠です。ただし、速筋を使い続けるには、体内に十分な糖質があることが前提条件になります。ここを理解せずに走り込むだけでは、フルマラソン後半の失速は防げません。
俺は当初、フルマラソンの必殺技はウォークブレイクだと本気で思っていました。しかし、エネルギー生成の理論から考えると、ウォークブレイクはタイム短縮の最適解ではないという結論に至ります。ウォークブレイクは、初心者や長距離に不慣れなランナーにとっては完走率を高める有効な方法です。しかし、速いタイムを狙うフルマラソン戦略としては、別の考え方が必要だと感じました(ウォークブレイクを試した実体験は前章のとおりです)。実際、ウォークブレイクでサブスリーを達成できるランナーは、ペース走でも同等の走力を持っているケースがほとんどなのです。
30kmの壁の正体|乳酸とLT値がフルマラソンを壊す理由
ここからは、フルマラソン後半失速の正体とも言える乳酸について解説します。下の図は、走るスピードに対して、脂質と糖質がどのように使われるかを示した相関図です(脂肪由来のエネルギー=脂質/血中グルコース由来のエネルギー=糖質)。
フルマラソン後半で失速した理由を理解するために何度も見返した図。LT値を超えると糖質依存が一気に高まります。
図の中央に引かれているラインがLT値(乳酸閾値)です。LT値とは、血中乳酸濃度が急激に上昇し始めるポイントを指します。このラインを超えると、糖質の使用量が一気に増加し、乳酸が大量に発生します。その結果、筋肉のパフォーマンスは低下し、さらに糖質の枯渇を加速させます。つまり、フルマラソンにおいてはデメリットしかないスピード領域ということになります。
「乳酸が溜まる走り方は、フルではNG」。理論を学んで、はっきりそう理解した瞬間です。
乳酸とは、運動中に糖質が分解されることで生じる副産物です。乳酸は筋肉のパフォーマンスを低下させます。これは身体が自らを守るための防衛反応でもあります。なお、溜まった乳酸は遅筋や中間筋によって除去されます。LT値(乳酸閾値)は、トレーニング強度を決める上で、ランナーにとって極めて重要な指標です。
- ① 乳酸生成 < 乳酸除去:楽に走れる
- ② 乳酸生成 = 乳酸除去:楽の限界
- ③ 乳酸生成 > 乳酸除去:急激にキツくなる
②がLT値(乳酸閾値)です。 LT値は、適切なトレーニングを行うことで効率よく引き上げることが可能です。その結果、フルマラソンを乳酸を溜めずに走れる速度域が広がります。ここまで勉強して、フルマラソンでタイムを狙う上で、絶対に外せない結論に辿り着きました。
フルマラソン42.195kmを、ペース走で走り切れるスピードを把握する。
必殺技はウォークブレイクではありません。乳酸を溜めずに走り切ること。これこそが、フルマラソン最大の必殺技です。
佐倉朝日健康マラソンの失敗分析|フルとハーフは別のスポーツ
佐倉朝日健康マラソンでの最大の敗因は、自分の走力を正確に把握していなかったことでした。さらに、ウォークブレイクを前提にしたことで、結果的に速すぎるペース設定になったことも大きな失敗でした。ここで、直近2レースを比較してみます。
| 大会 | 平均ペース | 失速地点 | シューズ |
| さいたま国際 | キロ4分30秒 | 35km付近 | アシックス GEL-INFINI |
| 佐倉朝日健康 | キロ4分05秒 | 25km付近 | ナイキ ズームフライ フライニット |
この比較から分かるのは、ペースを速くした分、失速地点が一気に前倒しになったという事実です。これは偶然ではありません。section2で解説したLT値(乳酸閾値)を超えるペースで走った結果です。ここで、もう一つ重要な気づきがありました。
【フルマラソン】と【ハーフマラソン以下の距離】の決定的な違い。それは、距離が違うだけではなく、まったく別のスポーツだということです。
ハーフマラソンやそれ以下の距離での成功の道
体内エネルギーをフル動員して走る。高いペースでの持久力が求められ、乳酸が溜まる前提で耐える能力が必要です。
フルマラソンでの成功の道
糖質の消費を最小限に抑えて走る。フルマラソンでは、長時間にわたる疲労管理・糖質を使い切らないペース設定・LT値以下で走り続ける戦略が、何より重要になります。
この違いに気づいてから、「ただ速く走る練習」ではフルマラソンは攻略できないと理解しました。距離ごとに求められる能力・戦略・トレーニングはまったく異なる。それぞれの距離特性を理解した上でトレーニングを積むことこそが、フルマラソン成功への近道です。
30kmの壁を越えるために必要な3つの能力
これまでの失敗と学びを振り返って、フルマラソンで結果を出すために本当に必要な能力がはっきりしました。マラソンに必要な能力は、次の3つです。
- 要素① 乳酸性閾値(LT値) → 乳酸を溜め込まずに走り続けられる能力
- 要素② 最大酸素摂取量 → 多くの酸素を取り込み、長時間運動を維持できる能力
- 要素③ ランニングエコノミー → 無駄のないフォームで、エネルギー消費を抑えて走る能力
フルマラソンでは、糖を無駄に使わずに走る力が極めて重要です。そのためには、無駄のないランニングフォームで走ることが欠かせません。ここで、声を大にして言いたいことがあります。
フルマラソンは気合と根性ではありません。
なぜなら、フルマラソンの失敗は精神論ではなく、身体のメカニズムで説明できるからです。
- 乳酸が過剰に発生し、筋肉のパフォーマンスが低下する
- 糖が枯渇し、速筋が動かなくなる
これが、フルマラソンで失敗する典型的なパターンです。もう一度、繰り返します。フルマラソンは気合と根性ではありません。必要なのは、乳酸を溜めない走り・糖を使い切らないペース・無駄のないフォーム。そして、これらを同時に鍛えるために辿り着いたのが、次に紹介する芝生ランニングでした。
対策に有効だった芝生ランニング|柏の葉で3時間1分57秒へ
フルマラソンで失敗を繰り返した結果、最終的に辿り着いた答えがランニングエコノミーを高める練習でした。そして、そのために最も効果的だったのが不整地ランニング、具体的には芝生ランニングです。
芝生のような不整地は、地面が不安定なぶん、自然と体幹と接地を整えないと走れない。だから無駄な力みが抜け、ランニングエコノミーが磨かれるのじゃ。しかもクッション性が高く、脚への衝撃も少ない。LT値を上げる練習をしながら、フォームと故障予防まで同時に手に入る――まさに30kmの壁対策にうってつけなのじゃよ。
この佐倉朝日健康フルマラソンの失敗をきっかけに、芝生ランニングを本格的に取り入れることにしました。その後の流れを、できるだけシンプルに書きます。佐倉の翌月、1か月間ほぼ芝生ランニングのみを実施しました。
佐倉朝日健康マラソン後、1か月間ひたすら走った河川敷の芝生エリア。アスファルトを避け、ランニングエコノミー改善だけを意識して走っていました。
そして、1か月後。柏の葉爽快フルマラソンにエントリー。結果は――
芝生ランニングを継続した1か月後に出したフルマラソンの公式成績。悪条件の中でも自己ベストを更新できた結果です。
3時間01分57秒(3kmの周回コースを14周・気温23度)。
柏の葉爽快フルマラソンで実際に走った3km周回コースのルート図。一定ペースを維持しやすい環境で、乳酸を溜めない走りを意識して周回しました。
悪条件の中でも、大幅な自己ベスト更新。これができた理由は、はっきりしています。芝生ランニングしかしていなかったから。冗談のようですが、本当にそれだけです(笑)。だからこそ、芝生ランニングは誰でも再現可能なフルマラソン成功戦略だと、自信を持って言えます。次回からは、この芝生ランニングを掘り下げていきます。まずは、月間走行距離をあえて落とした理由と、菜の花ロードでの芝生30km走の話です。
▶ 次の話:第39章「芝生ランニングで30km走|松戸市・菜の花ロード【不整地トレーニング】」
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30kmの壁の答えとなった「芝生ランニング」。そのメリットとトレーニングでの活用方法を、初心者にもわかりやすく紹介します(前編)。
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芝生ランニングの効果とフォーム改善の秘訣を、自然の力を使ったトレーニングとしてわかりやすく解説します(後編)。
後半に足が止まるのは、気合じゃなくて身体のメカニズムだったんだね。しかも答えが「芝生ランニングだけ」でPB更新なんて、すごく希望が持てる!
「もっと走り込む」じゃなくて「乳酸を溜めない走りを作る」。この発想の転換が、サブスリーへの本当のスタートだったんだ。次回はその芝生ランニングを実践編で、菜の花ロードの芝生30km走の話だよ。お楽しみに!
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