多くのランナーは、元気な状態でしか走る練習をしていない。ジョグも、ペース走も、ロング走も、始まりはいつも脚が新鮮な状態から。ところが本番の35km以降は、すでに脚が終わりかけた状態から、さらに粘ることを要求される。そこだけ練習していないのだから、そこで落ちるのは当たり前だ。
この記事では、本番と同じ「疲れた脚」を練習で作り出す方法を中心に、後半の失速対策をまとめる。
この記事でわかること
・35km以降に失速する4つの原因と、自分がどれかの見分け方
・見落とされがちな原因=練習が「元気な状態」に偏っている
・疲れた脚を再現する4つの練習と、その狙い
・本番での組み立て(前半・補給・35km以降の考え方)
・失速は練習不足だけが原因とは限らないという話(気温の実例)
・35km以降に失速する4つの原因と、自分がどれかの見分け方
・見落とされがちな原因=練習が「元気な状態」に偏っている
・疲れた脚を再現する4つの練習と、その狙い
・本番での組み立て(前半・補給・35km以降の考え方)
・失速は練習不足だけが原因とは限らないという話(気温の実例)
りんごちゃん
35kmまでは目標ペースで走れるのに、そこから毎回ガクッと落ちちゃうんです……。
バナナぴろし
それ、練習の中身がそのまま出てるんだよ。いつも元気な脚からスタートしてるでしょ?本番の35kmは、ボロボロの脚から始まるんだ🍌
りんごちゃん
あっ……たしかに、疲れてる状態から走り始めたことってないです!
ナップル博士
そこが盲点なのじゃ。鍛えたい能力が出てくる状況を、練習で再現せねば鍛えられん。疲労下で粘る力もまた然りじゃ🍍
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35km以降に失速する4つの原因|自分はどれか
後半の失速は、たいてい複数の原因が重なって起きる。まず切り分けるところから始めたい。| 原因 | 体で起きていること | こんな感覚なら |
|---|---|---|
| ①エネルギー切れ | 糖質が枯渇する(いわゆる30kmの壁) | 急に力が入らない・頭がぼんやりする |
| ②脚の限界 | 疲れた状態で動かし続ける力が不足 | 気持ちはあるのに脚が前に出ない |
| ③フォームの崩れ | 疲労で省エネな動きができなくなる | 腰が落ちる・歩幅が縮む・接地が重い |
| ④疲労下の練習不足 | そもそも疲れた状態で走った経験が無い | 初めての感覚で対処法が分からない |
①は補給、③はフォームの問題で、それぞれ対策がはっきりしている。ところが「補給もちゃんとした、フォームも意識した。それでも落ちる」という人が必ず出てくる。
その場合に残るのが②と④だ。そしてこの2つは、実は同じことの裏表になっている。
バナナぴろし見落とされる原因|練習が「元気な状態」に偏っている
自分の練習を思い出してほしい。疲れ切った状態から走り始めたことが、どれだけあるだろうか。たいていの練習はこうなっている。
| 練習 | 始まりの脚の状態 | 本番の35km以降と同じか |
|---|---|---|
| ジョグ | 新鮮 | × |
| ペース走 | 新鮮(アップ後) | × |
| インターバル | 新鮮 | × |
| ロング走(一定ペース) | 新鮮で入り、疲れて終わる | △(疲れてから上げていない) |
ロング走ですら「△」なのがポイントだ。距離を踏めば脚は疲れるが、疲れたところで終わってしまう。本番で要求されるのは「疲れたところから、もう一段粘る」ことなのに、その部分だけ練習していない。
だから対策は単純になる。疲れた状態を、意図的に作ってから走る。それだけだ。
りんごちゃん
ロング走も「疲れて終わる」だけだったんですね……。
疲れた脚を再現する4つの練習
本番の35km以降と同じ状態を作り出す練習を、負荷の低い順に並べる。| 練習 | やり方 | 鍛わるもの |
|---|---|---|
| ①ロング走の後半ペースアップ | ゆっくり入り、最後の5〜10kmをレースペースへ上げる | 疲れてからもう一段上げる力 |
| ②ジョグ後の刺激走 | 長めのジョグの後に1km×数本 | 疲労下でのスピード維持 |
| ③ペース変化走 | 速い・遅いを止まらずに繰り返す | ペースの揺れへの対応・乳酸処理 |
| ④連日のロング | 走った翌日にロング走を入れる | 疲労が蓄積した状態の再現 |
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🍌 疲れた脚で走る練習に使える2点
疲れた脚を再現する練習は補給のタイミングを本番と同じにすることで効果が上がります。個包装のエネルギージェルと、後半に負担が集まるふくらはぎを包むカーフスリーブを練習から試しておきましょう。
🍌 疲れた脚で走る練習に使える2点
疲れた脚を再現する練習は補給のタイミングを本番と同じにすることで効果が上がります。個包装のエネルギージェルと、後半に負担が集まるふくらはぎを包むカーフスリーブを練習から試しておきましょう。
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最初にやるべきは①だ。特別な準備が要らず、いつものロング走の入り方を変えるだけで成立する。
やり方はシンプルで、「速く走り切る」のではなく「遅く入って、最後だけ上げる」。30km走なら最初の20kmをゆっくり、残り5〜10kmでレースペースへ。これで「脚が重い状態からペースを上げる」という、本番でしか味わえなかった感覚を練習で経験できる。
④の連日ロングは効果が高い反面、故障のリスクも上がる。距離を積めていない段階でやるものではないので、まず①〜③を回してからにしてほしい。
ナップル博士
大事なのは「速く走ること」ではなく「疲れた状態を作ること」じゃ。目的を取り違えて最初から飛ばすと、ただの潰れたロング走で終わるぞい🍍
バナナぴろし本番での組み立て|35kmに何を残しておくか
練習で粘る力をつけても、レースの入り方を間違えれば同じ場所で落ちる。当日の組み立ては次の5点になる。| やること | 理由 |
|---|---|
| 前半は抑える | 35kmに余力を残すため。調子が良い日ほど突っ込みやすい |
| 補給を切らさない | ①エネルギー切れを潰す。ジェルは時間で計画的に |
| 35kmを「ここからが練習どおり」と捉える | 初めての感覚ではなくなる=④の対策 |
| フォームを意識に戻す | 疲れても腕を振る・お尻で押す。③の崩れを止める |
| 小さく区切る | 「あと7km」ではなく「あと5km」を繰り返して気持ちを保つ |
3つ目が、この練習を積む最大の意味だ。35kmで脚が重くなったとき、「これは練習でやった感覚だ」と思えるかどうか。同じ苦しさでも、既知か未知かで心の折れ方がまったく違う。
練習で再現した苦しさは、本番では自信に変わる。
りんごちゃん
「知ってる苦しさ」なら耐えられる気がします!
失速の原因は練習だけとは限らない|気温21℃の実例
ここまで練習の話をしてきたが、練習を積んでいても落ちるときは落ちる。正直にそう書いておきたい。かすみがうらマラソン2026で、俺はハーフを1時間29分31秒で通過した。ペースとしては悪くない。ところが当日の気温は21℃まで上がり、35〜40kmで一気にペースが崩れた。
暑さは冷蔵庫から出したビールに似ている。序盤はまだ冷たくても、時間とともに確実に温まる。体も同じで、序盤に感じないダメージが35km以降でまとめて出てくる。
| 練習で対処できるもの | 当日の判断で対処するもの |
|---|---|
| 疲れた脚で粘る力/距離への耐性/フォームの維持 | 気温・風・コースの起伏に応じた目標の下方修正 |
暑い日に平常時の目標ペースで押し切ろうとすると、35km以降で必ず代償が来る。練習が足りなかったのではなく、その日の条件に対して設定が速すぎただけ、というケースは珍しくない。
「練習どおりに走る」と「当日の条件を無視する」は別物だ。ここを混同しないでほしい。
バナナぴろし後半の失速に関するよくある質問
関連記事との役割分担
この記事は後半の失速の原因と対策を情報としてまとめています。佐倉のフルで失速したあとに30kmの壁を調べた筆者の実録は30kmの壁の原因と対策を完全解説|乳酸・LT値で後半失速を防ぐ(第38章)です。
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補給もしているのに35kmで失速します。なぜですか?
補給で防げるのはエネルギー切れだけで、疲れた状態で脚を動かし続ける力は別の能力です。補給が十分なのに落ちるなら、疲労下で粘る力が育っていない可能性が高くなります。ロング走の後半でペースを上げるなど、疲れた脚を意図的に作る練習を足してください。
ロング走はやっています。それでは足りませんか?
一定ペースのロング走は「疲れて終わる」練習で、「疲れてからもう一段上げる」練習にはなっていません。本番の35km以降で求められるのは後者です。ゆっくり入って最後の5〜10kmをレースペースへ上げる形に変えるだけで、狙う能力が変わります。
後半ペースアップのロング走は、どのくらいの頻度でやればいいですか?
負荷が高い練習なので、毎週入れるものではありません。通常のロング走の中に時々組み込む程度から始め、回復に支障が出ていないかを見ながら調整してください。距離を積めていない段階では、まず一定ペースのロング走で土台を作る方が先になります。
前日に走った翌日のロング走は効果がありますか?
疲労が蓄積した状態を再現できるため効果はありますが、同時に故障のリスクも上がります。走行距離が十分でない段階や、脚に違和感がある時期には向きません。本記事の4つの練習の中では最も負荷が高いものとして、最後に検討してください。
練習を積んでも失速しました。練習が足りないのでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。気温・風・起伏といった当日の条件は、練習量では打ち消せません。筆者もハーフを1時間29分31秒で通過しながら、気温21℃の日に35〜40kmで崩れています。暑い日に平常時の目標を押し通そうとすると後半で代償が来るため、条件に応じて設定を下方修正する判断も対策の一部です。
まとめ|疲れた脚を、練習で先に経験しておく
・後半の失速はエネルギー切れ・脚の限界・フォームの崩れ・疲労下の練習不足が重なって起きる・見落とされがちなのは「元気な状態でしか練習していない」こと
・対策は疲れた状態を意図的に作ってから走ること。まずはロング走の後半ペースアップ
・本番は前半を抑え、補給を切らさず、35kmを「練習どおり」と捉える
・ただし気温などの条件は練習では打ち消せない。設定の下方修正も対策のうち
次のロング走から変えられる。いつもより遅く入って、最後の5kmだけレースペースに上げる——それだけで、練習していなかった領域に手が届く。
りんごちゃん
さっそく次のロング走、ゆっくり入って最後だけ上げてみます!
ナップル博士
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