りんごちゃん
バナナぴろし
りんごちゃん
ナップル博士坂道トレーニングというと、短い坂を何本も駆け上がる「坂ダッシュ」を思い浮かべる人が多いと思います。この記事で取り上げるのは、それとは別のゆるい坂を長い距離、上り続ける・下り続けるロング走です。
私(バナナぴろし・52歳・フル自己ベスト2時間49分38秒)は坂練が大好きで、2021年3月の東京チャレンジでサブエガ(2時間50分切り)を取る前にも、長い坂を何度も走っていました。そのときの Strava の記録と、上り・下りのランニングを調べた研究をあわせて、効果と注意点をまとめます。
- 上り坂・下り坂で、走るのに使うエネルギーはどれだけ変わるか(研究)
- 坂のトレーニングで、タイムや走りの効率は上がるのか(研究)
- 下りのあとの筋肉痛と「2回目は軽くなる」仕組み(研究)
- サブエガ前の筆者の坂のロング走(平均1.5%を27km・峠を9km)
- 勾配の目安と、レース前の時期の注意
【結論】上りは「ゆっくりでも強い練習」、下りは「脚を慣らす練習」

先に結論です。
- 上りは、同じ速さでも平地よりエネルギーを多く使う。ペースを上げなくても、心臓と脚にしっかり負荷がかかる
- 坂のトレーニングで、5kmのタイムが平均約2%縮んだという介入研究がある(上り坂のインターバル・6週間)
- 下りは、エネルギーは少なくて済むが、筋肉には別の負担(ブレーキをかけながら伸ばされる)。筋肉痛は数日残ることがある
- そのかわり下りは、2回目からは筋肉痛が軽くなる(repeated bout effect)。少しずつ慣らすのが大事
ただし、「ゆるい上りを20km以上走るロング走」そのものの効果を調べた研究は、見つけられませんでした。この記事では、上り下りの研究からわかることと、私の記録を分けて書きます。
上りと下りで、使うエネルギーはどれだけ違う?
上り下りで、走るのに使うエネルギーを測った代表的な研究が、Minetti ほか(2002年・Journal of Applied Physiology)です。10人のランナーが、−45%(急な下り)から+45%(急な上り)までの傾斜のトレッドミルを走り、1mあたりに使うエネルギーを測りました。
※Minetti AE ほか(2002)Journal of Applied Physiology 93: 1039–1046 の要旨の数字。
走るときにいちばんエネルギーが少なくて済むのは、平地ではなく−20%くらいの下りでした。平地のほぼ半分です。反対に上りは、傾斜が急になるほど同じ距離を進むのに多くのエネルギーを使います。
つまり、上りはペースを落としても「きつい練習」になり、下りは楽に速く進める。ゆるい上りのロング走が、ペースが遅くても心肺に効く練習になる、という理屈はここにあります。
りんごちゃん
ナップル博士坂のトレーニングで速くなる?研究の結果
坂のトレーニングの効果を調べた介入研究の一つが、Barnes ほか(2013年・International Journal of Sports Physiology and Performance)です。よく走れる20人のランナーが、6週間、上り坂のインターバル(強さの違う5つのやり方)を行いました。
- 5kmのタイムトライアルは、やり方にかかわらず平均約2.0%速くなった
- いちばん強い上りのインターバルでは、走りの効率(ランニングエコノミー)が約2.4%よくなった
これは短い上りを繰り返すインターバルの研究で、ゆるい坂のロング走とは別の練習です。それでも、上り坂で走ることが、平地のタイムにつながることを示した結果です。
坂ダッシュのような短い坂の練習は、坂道トレーニングの坂の探し方や、坂道15kmビルドアップ走の実走記録に書いています。
下りのロング走と筋肉痛|2回目は軽くなる

下りでは、太ももの前の筋肉などが伸ばされながら力を出す(エキセントリック収縮)動きを繰り返します。ブレーキをかけ続けるような動きで、筋肉痛が出やすいことが知られています。
※Byrnes ほか(1985)の結果は、Khassetarash ほか(2022)の論文の紹介による。どちらも−20%前後のきつい下りでの結果です。
この「1回目はつらいが、2回目からは軽くなる」ことを repeated bout effect(くり返し効果)と呼びます。下りに慣れていない人が、いきなり長い下りを走ると数日脚が重くなることがある。でも、少しずつ下りを入れていけば、脚は慣れていく、ということです。
なお、下りの練習がマラソンの後半の脚に効くかを直接確かめた研究は、今回は見つけられませんでした。
りんごちゃん
ナップル博士サブエガ前の筆者の坂のロング走【Strava の記録】
ここからは私の記録です。2021年3月20日の東京チャレンジでサブエガ(2時間49分38秒)を取る前の、坂のロング走を Strava から2本取り出しました。
※Strava の記録から、止まっていた時間を除いて計算。坂の区間は、いちばん長く上り続けた(下り続けた)ところ。
1本目は、平均1.5%のゆるい上りを27km。ペースは5分29秒、心拍は141で、ほとんどジョグの強さです。それでも、上り続けているぶん脚はしっかり使います。2本目は、最後に9kmの峠の上り。心拍は169と、レースに近い強さでした。
こうした坂のロング走は、サブエガを取ったときの練習の一つです。ただ、サブエガはほかの練習も重ねた結果で、坂のロング走だけの効果だとは言えません。
ちなみに、2026年10月16日に出張先の長野・安曇野で走ったのも、ゆるい坂のジョグでした。穂高駅から4.7kmで約114m(平均約2.4%)を上って、6kmほど下る11km。休み休みのジョグでも、こういう地形なら自然に坂の練習になります。
りんごちゃん
バナナぴろしやり方|勾配の目安・ペース・レース前の時期
勾配は「上った高さ÷距離」で出せます。100m上るのに4km走るなら、100÷4,000=2.5%です。
研究と記録からいえる、やり方のポイントです。
- 上りはペースより心拍で。上りは同じペースでも平地よりエネルギーを使うので、平地と同じペースを守ろうとすると強くなりすぎる
- 下りは、最初は短く。長い下りに慣れていないうちは、いきなり10km以上の下りを入れない
- レースの直前は、強い下りを入れない。下りの筋肉痛は数日残ることがあるので、慣れていない下りはレースまで日にちのあるうちに
- 帰り道を考えておく。上り続けたら、同じだけ下って帰ることになる。脚が残っているうちに折り返す
自分の近くの坂の勾配は、地図で調べられます。坂の探し方は坂道トレーニングの坂の探し方にまとめています。
🍌 筆者が坂のジョグで履いている2足
安曇野のゆる坂はライバルフライ4、ズームフライ6も持っています。どちらも【使用中】。
坂のロング走のよくある質問
ゆるい坂を上るロング走には、どんな効果がありますか?
上りは平地より同じ距離を進むのに多くのエネルギーを使うので(Minettiほか、2002年)、ペースが遅くても心肺と脚にしっかり負荷がかかります。上り坂のインターバルを6週間行うと5kmのタイムが平均約2%縮んだという研究もあります(Barnesほか、2013年)。ただし、ゆるい上りのロング走そのものの効果を調べた研究は見つけられませんでした。
下り坂を走ると、なぜ筋肉痛になるのですか?
下りでは、太ももの前などの筋肉が伸ばされながらブレーキをかける動き(エキセントリック収縮)を繰り返すためです。30分の下りランでは、筋肉痛は約42時間後にいちばん強くなったと報告されています(Byrnesほか、1985年)。
下りの練習を続けると、筋肉痛は軽くなりますか?
軽くなります。同じ下りを3週間あけて2回走った研究では、2回目のほうが筋肉痛と筋肉の傷みの目安(CK)の上がり方が小さくなりました(Khassetarashほか、2022年)。これを repeated bout effect(くり返し効果)と呼びます。
坂のロング走は、どれくらいの勾配がいいですか?
筆者の記録では、ジョグの強さで上り続けたロング走は平均1.5〜2.4%、心拍169まで上がった峠走は平均5.4%でした。勾配は「上った高さ÷距離」で計算できます(例:4kmで100m上るなら2.5%)。
まとめ|ゆる坂は上って、下りは少しずつ
- 上りは平地より多くのエネルギーを使う。ペースが遅くても強い練習になる
- 走るのにいちばんエネルギーが少ないのは−20%前後の下り(平地のほぼ半分)
- 上り坂のインターバル6週間で、5kmのタイムが平均約2%縮んだ研究がある
- 下りは筋肉にブレーキの負担。筋肉痛は数日残ることがあるが、2回目からは軽くなる
- 筆者はサブエガの前に、平均1.5%を27km上るロング走や、9kmの峠を上る峠走をしていた
- 上りはペースを気にせず、下りは少しずつ、レースの直前は強い下りを入れない
近くに長いゆる坂があれば、まずはジョグのまま上ってみてください。下りは、帰り道の分だけでも十分な練習になります。
りんごちゃん
ナップル博士安曇野のゆる坂ジョグ(出張ランニング安曇野編)の日誌は、こちらです。






コメント