りんごちゃん
バナナぴろし
ナップル博士「テンポ走」「ペース走」は、決めたペースで続けて走る練習です。ただ、同じ20kmでも、楽なジョグに近い速さで走るのか、レースのペースで走るのか、もっと速く走るのかで、体にかかる負担も、鍛えられるところも変わります。
この記事では、ジャック・ダニエルズの『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』のペースの分け方(E・M・T)を土台に、20kmを続けて走る練習の効果を研究から整理します。あわせて、私(バナナぴろし・52歳・フル自己ベスト2時間49分38秒)が水戸黄門漫遊マラソンの1週間前に走った21.08km・平均4分58秒/kmの記録を、そのものさしで読んでみます。
- Eペース・Mペース・Tペースの違い(強さ・心拍・1回に走る長さの目安)
- 目標タイム別の、E・M・Tペースの目安(ダニエルズの式で計算)
- 20kmをE・M・Tで走ると、それぞれ何に効くのか
- 仕上がりを「心拍のずれ」で読む方法と、筆者の20kmの実例
- レースの1週間前に20km走ってよいのか(テーパリングの研究)
【結論】20kmを続けて走るなら、EかM。Tで20kmは長すぎる

先に結論です。
- Eペースの20kmは、長く動き続ける体の土台づくり。楽なので、くり返しやすい
- Mペースの20kmは、レースのペースそのものに体を慣らす、マラソンにいちばん近い練習。ただし、やりすぎない
- Tペースは、続けて走るなら20分程度が目安(ダニエルズ)。20kmを続けて走るのは長すぎる
- 強度の配分を比べた研究では、きつすぎない練習を多くしたグループのほうが、タイムがよく伸びた
- レースの直前は、強さは保って、量を減らすのが研究の型(2週間で41〜60%減)
つまり、マラソンのための20kmは「Mペースで、ときどき」。速ければ速いほどよい練習、ではありません。
Eペース・Mペース・Tペースとは|強さと1回の長さの目安
ダニエルズは、練習のペースを E・M・T・I・R の5つに分けています。20kmを続けて走る練習にかかわるのは、このうち E・M・T の3つです。
Tペースは、ダニエルズの言う「閾値」のペースです。続けて走る「テンポ走」としては20分程度が目安とされています。それより長く練習したいときは、少し休みを入れて何本かに分ける(クルーズインターバル)やり方になります。
日本では「ペース走」がMペースのこともTペースのことも指すので、同じ言葉でも、人によって中身がかなり違います。20kmのペース走を「Tペースで」と考えると、ダニエルズの目安の何倍もの長さになってしまいます。
E・M・T・I・Rの5つのペースの決め方は、こちらにまとめています。
目標タイム別のE・M・Tペース|キロ5分は人によって別の練習
ペースの秒数は、走力(ダニエルズの VDOT)で決まります。フルマラソンのタイムから VDOT を出し、ダニエルズの式で E・M・T のペースを計算すると、こうなります。
表を見ると、キロ5分前後の20kmは、走力によってまったく別の練習になることがわかります。
- フル2時間49分の走力なら、キロ4分58秒はEペース(楽なジョグの速いほう)
- フル3時間31分の走力なら、キロ5分00秒はMペース(レースのペース)
- フル3時間45分前後の走力なら、キロ4分58秒はもうTペース。20km続けるのは長すぎる
りんごちゃん
バナナぴろし
ナップル博士20kmをE・M・Tで走ると、何に効く?
それぞれのペースで20kmを走ったときに、何に効くと言われているかをまとめます。
20kmの距離にしぼった研究は見つかりませんでしたが、強度の配分(きつくない練習・中くらいの練習・きつい練習をどんな割合でやるか)を比べた研究はあります。
中くらいの強さを増やすより、楽な練習を多くしたほうが伸びた
Esteve-Lanao ほか(2007年・Journal of Strength and Conditioning Research)は、5000mを専門にする12人のランナーを2つのグループに分け、5か月間、心拍で強さを管理して練習しました。
中くらいの強さを増やしたグループも速くなっていますが、楽な練習の割合が多いグループのほうが、はっきり大きく伸びました。
もう1つ、Stöggl とSperlich(2014年・Frontiers in Physiology)は、よく鍛えたランナー・自転車・トライアスロンなどの選手48人を4つの練習方法に分け、9週間比べました。楽な練習とインターバルを組み合わせたグループ(ポラライズド)は、最大酸素摂取量が11.7%、限界まで走れる時間が17.4%増えました。一方、閾値の強さを中心にしたグループや、量を増やしただけのグループは、主な指標が伸びませんでした。
どちらも対象は鍛えた選手で、市民ランナーのマラソンの研究ではありません。それでも、中くらいの強さの20kmを毎週のように重ねるより、ふだんは楽に走り、Mペースの20kmは「ここぞ」で入れるほうが理にかなっている、と読めます。
ペース走そのもののやり方(ペースと距離の目安)は、こちらです。
仕上がりは「心拍のずれ」で読む|筆者の20kmの実例

長く一定のペースで走ると、ペースは同じでも、心拍がだんだん上がっていくことがあります。これを心拍のずれ(ドリフト、デカップリング)と呼びます。
コーチのジョー・フリールは、一定のペースで走った前半と後半で「速さ÷心拍」を比べ、その差が5%より小さければ、そのペースへの持久力ができている目安にしています(TrainingPeaks でよく紹介される考え方で、研究で決めた基準ではありません)。
8万人のマラソンで、ずれが小さい人ほど速かった
Smyth ほか(2022年・Sports Medicine)は、市民ランナー82,303人のフルマラソンの心拍とペースを調べました。心拍とペースのずれは、平均で25.2kmあたりから出はじめていました。ずれの大きさで3つに分けると、こうなりました。
ずれが小さい人ほどタイムがよく、ずれが出はじめるのも遅い。後半まで心拍が上がらないことは、マラソンの「持ち」と関係しているということです。
筆者の20km:後半のほうが心拍が低かった
では、私の10月18日のテンポ走(21.08km・平均4分58秒/km・平均心拍155)はどうだったか。走り出しの1kmを除き、2〜11kmと12〜21kmに分けて比べました。
ペースは前半も後半も同じで、心拍は後半のほうが4拍ほど低くなりました。ずれはマイナス、つまり心拍は上がっていません。
もう1つわかったことがあります。COROSの設定では、私の最大心拍は176、閾値心拍は160です。平均心拍155は最大の約88%で、表のMペースの目安(80〜90%)の上のほう、閾値心拍の少し下でした。ペースだけ見れば、昔の自己ベストの走力ではEペースのはずのキロ4分58秒が、心拍で見ると今の私にはMペースの上限近く。「ペースは今の走力で決める」の、そのままの実例になりました。
りんごちゃん
ナップル博士
バナナぴろしこの20kmの日誌(1kmごとのラップ・足首の具合)は、こちらです。
レースの1週間前に20kmは走っていい?テーパリングの研究
レース前に練習を減らして疲れを抜くことを、テーパリングといいます。
Bosquet ほか(2007年・Medicine and Science in Sports and Exercise)は、27の研究をまとめて分析しました。いちばん成績が上がったのは、2週間かけて、練習量を41〜60%まで減らしていき、強さと回数は変えないやり方でした。Mujika とPadilla(2003年・同じ雑誌)のまとめでも、テーパリングで成績はふつう約3%(0.5〜6%)上がり、強さは保って量を減らすのがよいとされています。
この型に当てはめると、レース1週間前の20kmは、強さとしてはよくても、量としては多めです。ふつうは、もう量を減らしはじめている時期だからです。
私の場合は、8月の終わりに足首を痛めてから、レースに近いペースで20kmを続けて走れるかを、まだ確かめていませんでした。研究の型どおりではないことを分かったうえで、「走れるかどうか」を確かめるほうを選んだ1本です。そのぶん、残りの1週間は量を減らすことが大事になります。
50代は回復が遅い?
「年をとると回復が遅くなる」とよく言われます。ただ、Fell とWilliams(2008年・Journal of Aging and Physical Activity)のまとめでは、高齢の人ほど筋肉の傷みから回復しにくいという説明はあるものの、運動量の違いを考えに入れた研究が少なく、年齢だけのせいかははっきりしないとされています。数字で決めつけず、自分の脚の具合を見ながら量を減らすのが現実的です。
レース1か月前からの30km走・テーパリング・ランオフの組み立ては、こちらにまとめています。
🍌 ペースを決める本と、心拍を測る道具
ペースの表はダニエルズの本、心拍のずれは胸や腕で測る心拍センサーがあると、ずっと正確に見られます。
テンポ走20kmのよくある質問
テンポ走20kmは、どのペースで走ればいいですか?
マラソンのための練習なら、目標のフルマラソンのペース(Mペース)か、それより楽なEペースです。ダニエルズは、閾値のペース(Tペース)で続けて走るのは20分程度を目安にしているので、Tペースで20kmを続けるのは長すぎます。
自分のMペース・Tペースはどう決めればいいですか?
昔の自己ベストではなく、今の走力で決めます。最近のレースのタイムからダニエルズの VDOT を出すと、ペースが計算できます。たとえばフル3時間31分ならMペースはキロ5分00秒、Tペースは4分41秒です(ダニエルズの式で計算)。
20kmのペース走は、どのくらいの頻度でやればいいですか?
毎週の定番にはしないのがおすすめです。強度の配分を比べた研究では、中くらいの強さの練習を増やすより、楽な練習を多くしたグループのほうがタイムが伸びました(Esteve-Lanaoほか、2007年)。ふだんは楽に走り、Mペースの20kmはレースに向けた大事な時期に入れます。
レースの1週間前に20km走っても大丈夫ですか?
27の研究をまとめた分析では、レース前の2週間で練習量を41〜60%減らし、強さと回数は変えないのがいちばん成績が上がりました(Bosquetほか、2007年)。この型から見ると、1週間前の20kmは量として多めです。走るなら、残りの日の量をしっかり減らしましょう。
まとめ|20kmはMペースで、ときどき。直前は量を減らす
- 同じ20kmでも、E・M・Tのどれで走るかで別の練習になる
- Tペースで続けて走るのは20分程度が目安。20kmを続けるのは長すぎる
- キロ5分は、フル2時間49分ならE、3時間31分ならM、3時間45分前後ならT
- 楽な練習を多くしたグループのほうが、中くらいを増やしたグループよりタイムが伸びた
- 後半まで心拍が上がらない人ほど、マラソンが速い(8万人の研究)
- 筆者の20km(キロ4分58秒)は、後半のほうが心拍が低かった(ずれ −2.6%)
- レース前は2週間で量を41〜60%減らし、強さは保つのが研究の型
20kmのテンポ走をするときは、まず「今の自分にとって、このペースはEなのか、Mなのか、Tなのか」を確かめてから走ってみてください。
りんごちゃん
ナップル博士Tペースで走る閾値走のやり方(時間・本数・頻度)は、こちらです。






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