りんごちゃん
バナナぴろし
りんごちゃん
ナップル博士
ナップル博士「ランニングのあとはタンパク質(プロテイン)」とよく言われます。でも、マラソンは筋肉を大きくするための運動ではありません。本当に必要なのか、とった場合ととらなかった場合で何が違うのかは、意外と知られていません。
この記事では、持久系の運動のあとに「炭水化物だけ」と「炭水化物+タンパク質」を比べた研究を中心に、何が変わって、何が変わらないのかを論文7本で整理しました。検索の上位には「とればとるほど回復する」という書き方が多いのですが、市民ランナー323人で差が出なかった試験もあります。そこも含めて紹介します。
- 走ったあとにタンパク質をとると、体の中で何が変わるか
- 筋肉痛・筋肉のダメージは減るのか(効いた研究と、効かなかった研究)
- グリコーゲン(筋肉の燃料)の回復と、翌日の走りは変わるのか
- 走ったあとに、何をどれだけ食べればいいか(体重60kgの例)
- 翌日も走る日が多い私の練習データ
結論|ランニング後のタンパク質で変わること・変わらないこと
先に結論です。走ったあとにタンパク質をとる意味はあります。ただし、効くのは主に「筋肉の修理」で、「翌日に速く走れる」「筋肉痛が消える」は条件しだいです。
※それぞれの論文の要旨をもとに筆者が整理。研究の多くは自転車や実験室での運動で、人数も10〜20人ほどの小さなものが中心です。
ここで大事なのは、研究の多くが「何もとらない」ではなく「炭水化物だけ」と比べていることです。走ったあとに何も食べないより、炭水化物をとるほうがよいのは前提。そのうえでタンパク質を足すと何が上乗せされるかを見ています。
りんごちゃん
ナップル博士筋肉の修理が進む|筋原線維の合成は約35%多い
走ると、着地のたびに筋肉が引き伸ばされながら力を出します。これをくり返すと、筋肉の線維に小さな傷ができます。体はこの傷を、タンパク質を材料にして作り直します。
イギリスのブリーンらは、鍛えた自転車選手10人に90分こいでもらい、終わった直後と30分後に「炭水化物25g」か「炭水化物25g+ホエイプロテイン10g」を飲んでもらいました。そのあとの筋肉の合成の速さを、筋肉を少し採って調べています。
- 筋原線維(筋肉が縮む部分)の合成は、タンパク質を足したほうが約35%多かった
- ミトコンドリア(酸素を使ってエネルギーを作る部分)の合成は、差がなかった
つまり、走ったあとにタンパク質をとると、傷ついた筋肉の修理が早く進むということです。持久力そのものを作るミトコンドリアのほうは、運動の刺激で増えるので、すぐあとの食事ではあまり変わりませんでした。

もう1つ、走る人が知っておきたい数字があります。加藤らは(カナダ・トロント大学との共同研究)、鍛えたランナーにトレッドミルで20km走ってもらい、その日に必要なタンパク質の量を調べました。結果は1日に体重1kgあたり1.65〜1.83g。一般の大人の目安(0.8g前後)の約2倍です。体重60kgなら100g前後になります。
1日に必要な量・体重別の早見表・「プロテインは腎臓に悪い?」については、別の記事にくわしくまとめています。
走る人は1日に何g? 体重別の早見表と、腎臓の心配はこちら。
バナナぴろし筋肉痛は減る?|効いた研究と、効かなかった研究
「タンパク質で筋肉痛が減る」という話は、研究によって結果が分かれます。筋肉が傷ついたときに血液に出てくるCK(クレアチンキナーゼ)という酵素の量と、本人が感じる筋肉痛で比べた研究を、3本並べます。
※ソーンダースらの試験は、タンパク質を「足した」分だけ飲み物のカロリーも多くなっています。
いちばん人数が多いのは、オランダのテン・ハーフらの試験です。対象はふだんの食事でタンパク質を十分とっている市民ランナーで、タンパク質を足しても、炭水化物を飲んだ人より筋肉痛が軽くなることはありませんでした。研究者は「炭水化物より優れているとは言えない」とまとめています。
まとめると、練習が多く、筋肉のダメージが大きい人ほど差が出やすく(ルーデンらの試験でも、走る距離が多い選手ほど差が大きい傾向でした)、ふだんの食事で足りている人が1回のレースのあとに足しても、筋肉痛はそれほど変わらない、と言えそうです。
りんごちゃん
ナップル博士
バナナぴろしグリコーゲンと翌日の走り|炭水化物が足りていれば差は出ない
長い距離を走ると、筋肉にためた燃料のグリコーゲンが減ります。次の練習でしっかり走るには、これを戻すことが先です。グリコーゲンの材料は炭水化物です。
イギリスのアルガンナムらは、運動のあと2〜6時間の回復を調べた研究をまとめました。わかったのは次の2つです。
- 炭水化物を十分にとれている(1時間に体重1kgあたり1.2gほど)ときは、タンパク質を足してもグリコーゲンの戻りは速くならない
- 炭水化物が少ない(1時間に体重1kgあたり0.8g未満)ときは、タンパク質を足すと戻りが助けられる
体重60kgなら、1時間に72gの炭水化物を、何時間も続けてとるのが「十分」の目安です。走り終えたばかりで食欲がないときに、これはなかなか大変です。炭水化物をたくさん食べられないときこそ、タンパク質が助けになる、ということです。

では、翌日以降の走りはどうでしょう。マクレランらは、炭水化物にタンパク質を足して持久力を比べた研究をまとめ、炭水化物が最適な量とれているなら、タンパク質を足しても持久力の上乗せはないと結論しています。前の章のソーンダースらの試験で長くこげたのも、タンパク質の分だけカロリーが多かったことが影響している可能性があります。
つまり、翌日の走りを決めるのは、まず炭水化物です。タンパク質は炭水化物の代わりにはなりません。「タンパク質を増やして、ごはんを減らす」は、走る人には逆効果になりやすい組み合わせです。
グリコーゲンをいっぱいにする食べ方は、レース前の「カーボローディング」でくわしく。
りんごちゃん走った後に何をどれだけ?|炭水化物が先、タンパク質は20g
ここまでの研究と、国際スポーツ栄養学会(ISSN)の目安(1回に体重1kgあたり0.25g、だいたい20〜40g)をもとに、走ったあとの食べ方を表にしました。
※食べ物の量は目安です(おにぎり1個=炭水化物約40g、牛乳200ml=タンパク質約7g・炭水化物約10g、バナナ1本=炭水化物約20〜25g)。
よく言われる「運動後30分以内」に、こだわる必要はありません。1日の合計量のほうが大事だという研究がまとまっています(くわしくは1日の量の記事で)。ただし、走ったあと次の食事まで何時間も空く日や、翌朝にまた走る日は、その場で何か口に入れておくほうが、合計量も燃料も確保しやすくなります。
研究でよく使われているのは、低脂肪のチョコレートミルクです。牛乳のタンパク質と砂糖の炭水化物が一緒にとれて、水分も入っています。日本なら、牛乳+おにぎりや、ココア味の牛乳たんぱく飲料が近い組み合わせです。
🍌 走ったあとの「修理の材料」を、手軽にそろえる2つ
牛乳に溶かして炭水化物も一緒にとれる粉のプロテインと、そのまま飲める紙パックの牛乳たんぱく飲料です。
💡 迷ったら、走り終えてすぐ飲める右の紙パック。家で毎回つくれるなら、左の粉を牛乳に溶かす形で。
プロテインは「飲まないといけないもの」ではありません。ふだんの食事で足りていれば、牛乳やおにぎり、卵でも同じ役割を果たせます。走ったあとすぐに食事ができない日の、手軽な選択肢の1つと考えてください。乳製品でおなかをこわしやすい人は、大豆(ソイ)のものが合う場合もあります。
バナナぴろし私の練習データ【実データ】|翌日も走る日が4〜7割
研究の話を自分のこととして考えるために、私(フル2時間49分38秒)のStravaの記録を集計しました。2019年4月から2026年9月27日までに、ランニングで記録した日は1,535日、そのうち25km以上のロング走は209回です。
※筆者のStravaの記録を集計。「翌日も走った日」は、走った日の次の日にも記録がある日の数。
初めてサブスリーを出した2019年は、走った日の7割近くで翌日も走っていました。2025年は翌日も走る割合が下がった代わりに、25km以上のロング走が38回と一番多い年です。どちらの場合も、「走ったあとに何を食べるか」は、次の練習の準備になります。
特に気をつけたいのは、スピード練習の翌日にロング走を入れるようなセット練習です。1日目で減った燃料と傷んだ筋肉を、次の日の朝までに戻す必要があります。研究で「炭水化物が少ないときはタンパク質が助けになる」「次の練習まで時間が短いときは差が出やすい」とされたのは、まさにこういう場面です。
スピード練習の翌日に27km。セット練習の実際の記録はこちら。
ナップル博士ランニング後のタンパク質のよくある質問
ランニング後のプロテインは不要ですか?
プロテイン(粉や飲料)は必須ではありませんが、タンパク質そのものは必要です。走ったあとにタンパク質を足すと、筋肉の修理(筋原線維の合成)が約35%多く進んだという研究があります。牛乳・卵・肉・魚・大豆などの食事でとれていれば、プロテインを飲む必要はありません。
ランニング後、何分後までに飲めばいいですか?
「30分以内」にこだわる必要はありません。1日の合計量のほうが大事です。ただし、次の食事まで何時間も空く日や、翌朝また走る日は、走り終えたら早めに炭水化物とタンパク質をとっておくほうが回復の面で有利です。
ランニング後のタンパク質は何グラムが目安ですか?
1回に体重1kgあたり0.25g前後、だいたい15〜20gが目安です(国際スポーツ栄養学会は1回20〜40gとしています)。あわせて炭水化物を体重60kgで60〜70gとると、燃料と修理の材料がそろいます。
ランニング後に飲むと良い飲み物は何ですか?
炭水化物とタンパク質と水分が一緒にとれるものです。研究では低脂肪のチョコレートミルクがよく使われています。身近なものなら、牛乳(+おにぎりやバナナ)、ココア味の牛乳たんぱく飲料などが近い組み合わせです。スポーツドリンクだけでは、タンパク質が入っていません。
ランニング後にプロテインを飲むと太りますか?
プロテインもカロリーがあるので、1日の食事に上乗せし続ければ体重は増えます。太るかどうかを決めるのは1日の合計カロリーです。走ったあとに飲むなら、その分だけ間食などを減らすと、全体のカロリーを増やさずにタンパク質を足せます。減量中もタンパク質は削らないほうが、筋肉が落ちにくくなります。
まとめ|タンパク質は「足す」もの、炭水化物の代わりにしない
「マラソントレーニングのあとにタンパク質をとるといい」は、本当です。ただし効くのは「筋肉の修理」で、翌日の走りを決めるのはまず炭水化物。タンパク質は炭水化物の代わりではなく、足すものです。
最初の一歩として、次のロング走やポイント練習のあとは、スポーツドリンクだけで終わらせず、牛乳かおにぎりをもう1つ足してみてください。それだけで「燃料+材料」がそろいます。
りんごちゃん
ナップル博士フルマラソンを走ったあとの回復期間と、練習を再開する目安はこちら。
参考にした論文
- Breen L, et al. The influence of carbohydrate-protein co-ingestion following endurance exercise on myofibrillar and mitochondrial protein synthesis. J Physiol. 2011.
- Saunders MJ, et al. Effects of a carbohydrate-protein beverage on cycling endurance and muscle damage. Med Sci Sports Exerc. 2004.
- Luden ND, et al. Postexercise carbohydrate-protein-antioxidant ingestion decreases plasma creatine kinase and muscle soreness. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2007.
- ten Haaf DSM, et al. The Effect of Protein Supplementation versus Carbohydrate Supplementation on Muscle Damage Markers and Soreness Following a 15-km Road Race. Nutrients. 2021.
- Alghannam AF, Gonzalez JT, Betts JA. Restoration of Muscle Glycogen and Functional Capacity: Role of Post-Exercise Carbohydrate and Protein Co-Ingestion. Nutrients. 2018.
- McLellan TM, Pasiakos SM, Lieberman HR. Effects of Protein in Combination with Carbohydrate Supplements on Acute or Repeat Endurance Exercise Performance: A Systematic Review. Sports Med. 2014.
- Kato H, et al. Protein Requirements Are Elevated in Endurance Athletes after Exercise as Determined by the Indicator Amino Acid Oxidation Method. PLoS One. 2016.
- Jäger R, et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2017.






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