マラソンのDNF後の立て直し方|61kmでやめた2ヶ月後に100kmを完走するまで

マラソンのDNF後の立て直し方|3回やめた僕が2ヶ月後に100kmを完走するまで

りんごちゃん りんごちゃん
レースを途中でやめてしまいました……。半年も準備したのに。自分が情けなくて、まだ何も考えられません。

バナナぴろし バナナぴろし
その気持ち、よく分かるよ。俺はDNFを3回している。71kmのウルトラを61kmで、70kmのウルトラを35kmで、5000mのトラックレースを2.71kmで。ぜんぶ途中でやめた。

りんごちゃん りんごちゃん
え、3回も!? サブスリーを出してる人でも、途中でやめることがあるんですか……。

ナップル博士 ナップル博士
ここが肝心じゃぞい。その3回は、原因がまったく違うのじゃ。低血糖・単調さ・暑さ——ぜんぶ「根性が足りない」で片づけていたら、何ひとつ直っていなかった🍍

バナナぴろし バナナぴろし
そして——61kmでやめた、その2ヶ月後。俺は会津磐梯山ウルトラマラソン100kmを11時間17分で完走している。DNFは終わりじゃない。この記事は、そのあいだに何をしたかの話だよ🍌

レースを途中でやめた直後は、何を読んでも頭に入りません。まずはこの記事を閉じて休んでもらってかまいません。

そのうえで、落ち着いてから読み返してほしいことをまとめました。

  • DNF後にやることは3つだけ——そして順番がある
  • 俺の3回のDNFと、その原因がすべて違った話(実データつき)
  • やってはいけない3つ(多くの人が当日にやってしまう)
  • 当日/数日後/2週間後の立て直しの手順
  • 61kmでやめた2ヶ月後に100kmを完走するまでに変えた3つ
  • DNS・DNF・DQの違い

ひとつだけ先に言っておきます。DNFは失敗ではなく、記録です。そして記録は、読み方さえ間違えなければ次の完走に使えます。

バナナぴろし バナナぴろし
「なぜ止まったのか」を先に知りたい人へ🍌
ウルトラで人が止まる理由は、実は脚じゃないことが多いんだ。低血糖・脱水・「心が折れる」の正体を、補給の設計まで含めてまとめてあるよ。

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この記事でわかること
・DNFとは何ですか?
・DNFしたら、すぐに次のレースへ申し込むべきですか?
・脚が動くのに気持ちが切れるのは、珍しいことですか?
・DNF後の振り返りでは何を記録すればよいですか?
・途中棄権は失敗ですか?

結論|DNF後にやることは3つ。順番を間違えない

先に結論だけ書きます。やることは3つで、順番が決まっています。

いつやることやらないこと
当日休む。ただそれだけ意味づけをしない。「いい経験だった」もまだ早い
数日後感情と事実を分けて書き出す原因を「根性」で片づけない
落ち着いてから次に変えることをひとつだけ決める全部を変えようとしない

この順番が大事な理由は単純で、当日の自分は判断力が落ちているからです。長時間動いたあとは体も頭も消耗していて、そこで出した結論はたいてい極端になります。「もう向いていない」も「次は根性で走り切る」も、どちらも当日の産物です。

順番を守るだけで、DNFは「引きずるもの」から「使えるもの」に変わります。

ナップル博士 ナップル博士
DNFは結果であって、人格の評価ではない。まず事実と感情を切り分ける。そこからしか、次に直す点は見えてこんぞい🍍

俺は3回DNFしている|原因は毎回まったく違った

ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。DNFには「種類」があります。

俺の3回を、当日の数字と一緒に並べます。

いつレース止めた地点そのときの数字原因
2024年4月 第19回 戸田・彩湖
ウルトラ 71km
61km 晴天・14時に20℃超
設定キロ5分10〜15秒
痛みはゼロ
低血糖
2025年4月12日 彩湖ウルトラ 70km
(3年連続の挑戦)
35.04km 平均5分29秒/km
平均心拍149bpm・気温15℃
周回の単調さで
気持ちが削られた
2026年5月31日 東京トラックラン
5000m
2.71km 28℃・湿度49%
3分36秒/kmで巡航中
ウルトラ明け2週間
暑さと内臓の血流不足
による吐き気

この表から分かる、いちばん大事なこと

3回とも、脚の故障では止まっていません。

61kmのときは、どこも痛くありませんでした。脚も動いていた。それでも止めた。35kmのときも脚の故障ではなく、周回を重ねるうちに気持ちが先に折れました。2.71kmのときは吐き気です。

もしこの3回を「根性が足りなかった」の一言でまとめていたら、原因は永久に見つかりませんでした。実際には——

  • ①は補給の設計ミス……直せるのは食べ方であって、気合ではない
  • ②は環境とレース設計の問題……周回コースの単調さを想定していなかった
  • ③は暑さと回復不足……ウルトラの2週間後に全力を出す計画自体に無理があった

原因が違えば、対策も違います。だからこそ、振り返りでは「なぜ止まったか」を精神ではなく条件で書き出す必要があります。

35kmで止まった日の当日データと判断は【体験記】彩湖70kmウルトラマラソンで35kmリタイアに、5000mを2.71kmで止めた日の心拍データは5000mトラックレース28℃でDNFに、それぞれ詳しく残しています。

りんごちゃん りんごちゃん
「DNF」ってひとつの言葉だけど、中身は全然ちがうんですね。私も「弱かった」で終わらせるところでした……。

DNF後にやってはいけない3つ

どれも善意から出る行動なのに、立て直しを遅らせます。

①その日のうちに次のレースへ申し込む

「すぐ次を決めれば前を向ける」——気持ちは分かりますが、当日の申し込みは、たいてい距離もタイミングも無理があります。判断力が落ちた状態で選んだレースは、同じ失敗を再生産しがちです。

申し込むのは、原因をひとつ特定してからで間に合います。

②その日のうちに「いい経験だった」と結論づける

無理に前向きにしようとすると、悔しさが処理されないまま残ります。しかもこのとき出る「いい経験だった」は、たいてい自分を納得させるための言葉で、中身がありません。

悔しいなら、悔しいままでいい。それを消す必要はなく、あとで判断材料に変えればいいだけです。俺の場合も、先に必要だったのは反省ではなく悔しかった事実をそのまま認めることでした。

③原因を「根性が足りなかった」にする

これがいちばん危険です。精神論で片づけた瞬間、対策が「次はもっと頑張る」しかなくなります。そして次も同じところで止まります。

上の表のとおり、俺の3回は補給・環境・暑さが原因でした。どれも精神で解決するものではありません。

バナナぴろし バナナぴろし
61kmで止めたとき、俺も最初は「甘えた」と思ったんだ。でも今なら分かる。あれは気持ちの問題じゃなく、体の問題だった。自分を責めた時間は、正直まるごと無駄だったよ🍌

立て直しの手順|当日・数日後・2週間後

当日|結論を出さずに休む

やることは回復だけです。食べて、水分を摂って、寝る。SNSに何か書きたくなっても、その日は書かなくていい。意味づけは後からいくらでもできます。

数日後|感情と事実を分けて書き出す

ここが立て直しの本体です。ノートでもスマホのメモでもいいので、2つの欄に分けて書きます。

欄書くこと例
事実止めた地点・時刻・気温・ペース・心拍・食べたもの・飲んだ量・痛みの有無「35.04km/平均5分29秒/km/心拍149bpm/気温15℃/痛みなし」
感情止めたいと思った最初の瞬間と、そのときのきっかけ「同じ景色の3周目で、急にどうでもよくなった」

分けて書く理由は、混ざったままだと「つらかった」で終わってしまうからです。事実の欄に数字が並ぶと、そこに原因が見えてきます。

振り返りは4項目に分けると外さない

項目確認すること次回の対策例
身体痛み、脚の重さ、胃腸、睡眠、直前のレース疲れ練習量とレース間隔を見直す
補給水分・糖質・塩分を、いつ・どれだけ摂ったか距離ではなく時間で補給計画を作る
環境気温、湿度、風、コース形状、周回の単調さ暑熱順化・気分転換の手を用意する
気持ち止めたいと思った地点ときっかけ判断の単位を「次の1周」まで小さくする

彩湖では、気温だけでなく同じ景色を繰り返す周回コースで気持ちが削られました。これを言葉にできると、次からは「苦しくなったらゴールまで耐える」ではなく「次の1周だけ進む」と、判断を小さくできます。ウルトラでは、この差が決定的です。

2週間後|変えることを「ひとつだけ」決める

4項目のうち、いちばん効きそうなものをひとつだけ選びます。全部を変えようとすると、どれも中途半端になり、しかも何が効いたのか分からなくなります。

ひとつに絞れば、次のレースが「実験」になります。そして実験には、失敗がありません。

りんごちゃん りんごちゃん
「次の1周だけ」——それなら私にもできそうです。ゴールまでの40kmを考えるから、動けなくなるんですね。

「脚は動くのに止まった」の正体

DNFのなかでも、いちばん自分を責めやすいのがこのパターンです。どこも痛くない。脚も動く。それでも止めた。

61kmで止めたとき、俺がまさにそれでした。理由は「なんか、キツくなった」——それだけです。

「やめる理由」が次々と湧いてきたら、それはサイン

あのとき、止める理由が次から次へと浮かんできました。

  • 「怪我して練習できなくなったら嫌だな」
  • 「61kmも走ったんだから、良い練習になった」
  • 「今日は暑いし、無理する日じゃない」

自分でも驚くくらい、もっともらしい理由が出てきます。これは意志が弱いのではなく、脳のエネルギーが不足したときに起きる典型的な状態です。

血糖が下がると、集中力が落ち、判断が雑になり、同じペースなのに異常にキツく感じるようになります。そして意欲が保てなくなり、人はやめる理由を探し始めます。

気合が足りなかったのではなく、燃料が切れていた。だから対策も精神論ではなく、先に入れておくことになります。

対策は「距離」ではなく「時間」で摂ること

ここが実際に変えたポイントです。「◯km地点で摂る」ではなく「◯分ごとに摂る」に切り替えました。

距離基準だと、ペースが落ちた終盤ほど補給の間隔が空いてしまいます。いちばん必要な時間帯に、いちばん減ってしまう——これが61kmの失敗でした。時間基準なら、遅くなっても間隔は変わりません。

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2026年9月時点で在庫があり、リンク先が生きていることを確認した商品です。100kmを完走したときに実際に携行していたのが、ジェル・塩タブ・カロリーメイトの組み合わせでした。
高価なものは必要ありません。大事なのは中身より「時間で摂る」という運用のほうです。ふだんの練習で必ず試してから本番に持ち込んでください(胃腸に合うかは人によります)。

💡 まずは補給を1つずつ見直すところから。次のレースで試す数を決めておくと、立て直しやすくなります。

価格は2026年9月18日時点
※価格は2026年9月18日時点。補給の量や間隔は体格・気温・ペースで変わります。体調不良が続く場合や持病がある場合は、自己判断せず医療機関で相談してください。

ナップル博士 ナップル博士
「やめる理由を探し始めたら、まず食べる」——これを覚えておくだけでよい。考えが変わるのを待つのではなく、燃料を入れてから考え直すのじゃ🍍

61kmでやめた2ヶ月後、100kmを完走した|変えたのは3つ

ここが、この記事でいちばん伝えたい事実です。

2024年4月、彩湖の71kmを61kmでDNF。その2ヶ月後の6月16日、会津磐梯山ウルトラマラソン100kmを11時間17分で完走しました。気温30℃超の猛暑で、多くのランナーが関門にかかった年です。

距離は71kmから100kmへ、29km増えています。それでも完走できた。変えたのは3つだけでした。

変えたこと中身どのDNFへの答えか
①補給を時間で設計したジェル・カロリーメイト・塩分・水分を時間別にシミュレーションして持ち物を決めた61kmの低血糖に直結
②暑さに体を慣らしたサウナラン・暑熱順化ジョグ・冷却ギアを事前にテストした本番が30℃超になる前提で準備
③登りの脚を作った累積標高500〜1000mの峠走・トレイル練習高低差2000mのコース対策

注目してほしいのは「精神」が入っていないこと

3つとも準備の中身です。「今度こそ絶対にやめない」といった決意は、ひとつも入っていません。

DNFの原因が条件にあるなら、条件を変えるしかない。気持ちで乗り切ろうとしていたら、100kmで同じ場所に戻っていたはずです。

当日はウエストポーチにジェル・塩タブ・カロリーメイトを入れ、前日は会場近くで車中泊、朝4時起床、5時スタート。朝食は菓子パンとジェルで軽めに。すべて事前に決めてあったので、当日は迷う場面がありませんでした。

DNFは、次の準備のための情報です。俺にとって61kmの失敗は、100kmの完走に必要な材料でした。

りんごちゃん りんごちゃん
2ヶ月で、しかも距離が29kmも増えて完走……! 気合を入れ直したんじゃなくて、準備を作り直したんですね。

バナナぴろし バナナぴろし
正直に言うと、その翌年もまた彩湖で止まってる(35km)。1回直したから全部解決、にはならないんだ。でもそれでいい。止まるたびに違う課題が出てくるだけだからね🍌

DNS・DNF・DQの違い

リザルトに並ぶ3つの略語を整理しておきます。

表記読み・元の英語意味
DNSDid Not Start出走しなかった(体調不良・欠場など。スタートラインに立っていない)
DNFDid Not Finish出走したが完走しなかった(途中棄権・リタイア)
DQDisqualified失格(コース外走行、ゼッケンの不正使用、ルール違反など)

日本語ではDNF=途中棄権・リタイアと呼ばれます。なお関門(制限時間)に間に合わずに止められた場合は、大会によってDNF扱いになることも、「関門アウト」として別表記になることもあります。

DQ(失格)とDNFは別物です。DNFは自分または運営の判断で止めたということで、ルール違反ではありません。ここは混同しないでください。


📊 筆者の7年分の実データで分析した記事

DNF後のよくある質問

DNFとは何ですか?

Did Not Finish の略で、出走したものの完走しなかったことを指します。日本語では「途中棄権」「リタイア」と呼ばれます。よく似た表記にDNS(Did Not Start=出走しなかった)とDQ(Disqualified=失格)があり、DNFはこのどちらとも別です。DNFはルール違反ではありません。

DNFしたら、すぐに次のレースへ申し込むべきですか?

当日に申し込むのはおすすめしません。長時間動いたあとは判断力が落ちていて、距離もタイミングも無理のある選択をしがちだからです。先に原因をひとつ特定してから申し込むと、次のレースが「同じことの繰り返し」ではなく「対策を試す場」になります。急がなくても間に合います。

脚が動くのに気持ちが切れるのは、珍しいことですか?

まったく珍しくありません。ウルトラで止まる人の多くは、脚が壊れて止まるわけではありません。俺自身、71kmを61kmで止めたときどこも痛くなく、脚も動いていました。「やめる理由が次々と湧いてくる」のは、脳のエネルギーが不足したときに起きやすい状態です。意志の強さの問題ではないので、まず補給を見直してください。

DNF後の振り返りでは何を記録すればよいですか?

事実と感情を分けて書きます。事実は止めた地点・時刻・気温・ペース・心拍・食べたもの・飲んだ量・痛みの有無。感情は止めたいと最初に思った瞬間と、そのきっかけ。そのうえで身体・補給・環境・気持ちの4項目に分けて原因を探すと、「根性が足りなかった」で終わらずに済みます。

途中棄権は失敗ですか?

失敗ではなく記録です。結果は完走かDNFかの二択でも、挑戦の価値まで二択にする必要はありません。むしろ止めた判断が正しかった場面もあります——痛みを我慢して走り続けて長期離脱するより、その日に止めるほうが良い場合は確実にあります。DNFは、次の準備に使える情報として残してください。

DNFのあと、どれくらい休めばいいですか?

止めた距離と原因によります。痛みがあるなら、痛みが消えるまでは走らないのが大前提です。痛みがなく補給や暑さが原因だった場合でも、当日と翌日は完全休養にして、そこから軽いジョグで様子を見るのが無難です。距離を踏んだあとほど、体感より回復は遅れています。焦って再開して故障するのが、いちばんもったいない結末です。

同じレースで2年続けてDNFしました。向いていないのでしょうか?

俺も彩湖で2年連続DNFしています(61km→35km)。ただし原因は2年で違いました。1年目は補給、2年目は周回コースの単調さで気持ちが削られたことです。原因が違うなら、それは「同じ失敗」ではありません。向き不向きの前に、まず2回の条件を並べて比べてみてください。同じ結果でも、中身が違えば打つ手も違います。

DNFしたことを人に言うのが恥ずかしいです。

その気持ちは自然なものですが、隠すと次に使えなくなります。俺はDNFを3回とも記事にして残しました。理由は単純で、書いて残したものだけが次の準備に使えるからです。それに、途中でやめる経験があるのは自分の限界に近いところに挑戦している証拠でもあります。安全圏だけを走っていれば、DNFは起きません。


まとめ|DNFを次のスタートに変える

論点結論
当日にやること休むだけ。意味づけも申し込みもしない
数日後にやること事実と感情を分けて書く。数字を残す
落ち着いてから変えることをひとつだけ決める
いちばんの禁じ手原因を「根性が足りなかった」にすること
脚が動くのに止まったら意志ではなく燃料切れを疑う。補給は距離でなく時間で
実際どうなったか61kmでDNF → 2ヶ月後に100kmを11時間17分で完走

DNFの直後は、自分だけが立ち止まっているように感じます。でも実際には、止まった場所には必ず理由があり、その理由はたいてい直せるものです。

俺は3回止まりました。そのうち1回は、2ヶ月後に29km長い距離を完走することにつながりました。残りの2回も、まだ答えを探している途中です。

リタイアしても終わりではありません。心が走り続けている限り、まだ旅の途中です。

バナナぴろし バナナぴろし
今日やめた自分を責めなくていい。やることは、休んで、数字を書いて、ひとつだけ変えるだけ。それで次のスタートラインには、ちゃんと立てるよ🍌

りんごちゃん りんごちゃん
今日は休みます。数日たったら、事実の欄から書いてみますね。……ちょっとだけ、前を向けた気がします。

ナップル博士 ナップル博士
その2ヶ月後に走った100kmの記録はこれじゃ🍍
高低差2000m・気温30℃超。61kmで止めた男が、どう走り切ったのか。区間タイムと補給の中身まで全部残してあるぞい。
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