バナナぴろし
りんごちゃん
バナナぴろし
ナップル博士大会の数日前に風邪をひくと、「走らないと走力が落ちる」「でも無理をすると悪くなる」と、どうしても迷います。
私(バナナぴろし・52歳・フル自己ベスト2時間49分38秒)も、ちょうど今、水戸黄門漫遊マラソンの週に、微熱と喉の痛みが出ています。病院には行っておらず、症状は喉だけ。月曜からは走っていません。この記事では、同じように迷っている人のために、体調不良のときに走ってよいかを、論文の数字で整理します。
- 「首から上なら軽く運動してよい」というネックチェックの出どころと、その弱点
- 風邪のまま運動した実験で、症状は悪くなったのか
- 熱があるのに走るデメリット(完走できない割合・心筋炎・周りへの感染)
- 走力が落ちるのが不安で、咳をしながらジョグする人へ
- 大会の数日前に風邪をひいたときの、日ごとの判断の目安
- 風邪を早く治すといわれること(睡眠・ビタミンC・亜鉛)の本当の数字
【結論】熱があるうちは走らない。大会前の数日は「休む」ほうが得
先に結論です。
- 熱があるときの激しい運動は、避けるのがスポーツ医学の一致した考え方(Friman ほか)
- 鼻水・喉の痛みなど「首から上」だけで熱がなければ、軽い運動ならよいという目安がある(ネックチェック)。ただし、科学的に確かめられた線引きではない
- 熱のない風邪で、中くらいの運動をしても症状は悪くならなかった実験がある。ただし、若い人・短い運動の話で、マラソンの話ではない
- 大会前に全身の症状(熱・だるさ・節々の痛みなど)があったまま出たランナーは、完走できない割合が1.9倍だった(7,031人の研究)
- 大会前の数日走らなくても、走力はほとんど落ちない。もともと練習量を減らす時期だから
つまり、大会の数日前の風邪は「走って治す」ものではなく、休んで治してから、当日の体で決めるものです。
走っていいかの目安「ネックチェック」|首から上か、下か

風邪のときに運動してよいかの目安として、昔から使われているのが「ネックチェック」です。アメリカのスポーツ医学の医師 Eichner が、1993年に The Physician and Sportsmedicine 誌で紹介した考え方として知られています。
熱は「首から上か下か」に関係なく、休む合図
とくに大事なのが熱です。スウェーデンの感染症の医師 Friman らは、まとめの論文(1998年・International Journal of Sports Medicine、2000年・Immunology and Cell Biology)で、感染して熱があるときの激しい運動は危険になりうるので、いつでも避けるべきと書いています。熱のある感染症では、筋肉が分解されたり、血液の循環の調整が乱れたりして、運動の力そのものが落ちるとも説明されています。
ネックチェックは「科学的ではないが、一部は役に立つ」
ただし、ネックチェックは研究で確かめた線引きではありません。フィンランドの Ruuskanen ほか(2024年・Journal of Sport and Health Science)は、ネックチェックを「科学的ではないが、一部は役に立つかもしれない」ルールと書き、風邪のあとに運動へ戻る基準は、どれも専門家の意見にもとづくものだとしています。
同じウイルスでも、喉だけで済む人もいれば、全身に広がる人もいます。「喉だけだから大丈夫」と決めつけず、熱と体のだるさを毎日たしかめるのが現実的な使い方です。
りんごちゃん
ナップル博士疲れのサインと「休む」の考え方は、こちらにまとめています。
風邪のまま運動した実験|症状は悪くならなかった。ただし条件つき
「風邪のときに運動すると悪化する」は本当なのか。これを人で確かめた、めずらしい実験があります。アメリカの Weidner らのグループの研究です。
3つとも、熱のない風邪で、中くらいの運動をしても、症状は悪くならず、長引きもしなかったという結果です。
ただし「熱っぽい」と感じた人は、走り方が乱れた
同じグループの別の研究(Weidner ほか 1997年・Journal of Athletic Training)では、風邪をひいた18人と、ひいていない20人のランニングを撮影して比べました。風邪の人は、歩幅や足の回転(ピッチ)、足首の動きが変わっていて、とくに「熱っぽい」と感じていた人ほど、歩幅とピッチの変わり方が大きかった。研究者は、けがが増えたり、走りの効率が落ちたりするかもしれないと書いています。
注意したいのは、どの実験も若い人が、熱のない状態で、30〜40分の運動をしたという条件だということです。熱がある状態や、42.195kmのレースにそのまま当てはめることはできません。
体調不良のまま走るデメリット|完走できない割合は1.9倍
では、体調が悪いまま大会に出ると、どうなるのか。数字のある研究を見ていきます。
①大会前に全身の症状があった人は、完走できない割合が1.9倍
南アフリカの Van Tonder ほか(2016年・British Journal of Sports Medicine)は、長距離レースに出る7,031人のランナーに、レースの3〜5日前に体調を聞き、その後のレース結果を追いかけました。
完走できない割合そのものは数%と小さいのですが、全身の症状がある人は、ない人のほぼ2倍、途中でやめていました。説明を受けても、症状のある人の多くはそのまま出場していた、というのも正直な結果です。
②熱があるときの激しい運動と、心筋炎
熱があるときに運動を避ける理由として、よく挙がるのが心筋炎(心臓の筋肉の炎症)です。Ruuskanen ほか(2024年)は、50年以上前のマウスの実験を紹介しています。心臓に入りやすいウイルス(コクサッキーウイルス)に感染させたマウスのうち、運動させなかったマウスで心臓の病気で死んだのは5.5%、朝と午後に30分ずつ泳がせたマウスでは50%でした。
一方で、同じ論文は、ふつうの風邪のウイルスの多く(ライノウイルスなど)は心臓に入りやすいウイルスではない、とも書いています。ふつうの喉風邪で心筋炎になることを、必要以上におそれることはありません。ただ、心筋炎は熱やだるさを伴うこともあれば伴わないこともあるので、Friman らは、選手に心筋炎を疑う症状を教えておくべきだとしています。走っていて胸の痛み・動悸・息苦しさ・めまいがあれば、すぐに止まってください。
③マラソンのあとは、風邪をひきやすい
Nieman ほか(1990年・Journal of Sports Medicine and Physical Fitness)は、ロサンゼルスマラソンのランナー2,311人を調べました。大会前に病気がなかったランナーのうち、大会後の1週間に風邪などをひいた人は12.9%。同じくらい走っているのに大会に出なかった人では2.2%でした。治りかけの体でフルマラソンを走れば、そのあとにぶり返すことも考えておく必要があります。
④周りのランナーにうつす
スタートの整列ブロックや給水所は、人がぎゅうぎゅうに集まる場所です。咳やくしゃみが出る状態で並べば、周りの人にうつすかもしれません。自分の体だけでなく、同じ大会に向けて練習してきた人のことも考えたいところです。
バナナぴろし
りんごちゃん水戸黄門漫遊マラソンのコースと関門は、こちらです。
走力が落ちるのが不安で、咳をしながらジョグする人へ

体調が悪くてもジョグを続ける人の多くは、「休むと走力が落ちる」のが怖いのだと思います。私もそうです。でも、大会前の数日休んでも、走力はほとんど落ちません。
もともと、大会前は量を減らす時期
Bosquet ほか(2007年・Medicine and Science in Sports and Exercise)は、27の研究をまとめて分析し、大会前の2週間で練習量を41〜60%減らし、強さと回数は保つやり方が、いちばん成績が上がったとしています。大会の数日前は、もう練習で走力を上げる時期ではなく、疲れを抜く時期です。風邪で数日走らないのは、量を減らすテーパリングを、少し強めにやったようなものです。
体力が落ちるのは、もっと長く休んだとき
Mujika とPadilla(2000年・Sports Medicine)のまとめでは、練習をやめると、よく鍛えた選手でも最大酸素摂取量や血液の量が落ちていきます。ただし、これは数週間の単位の話です。数日で積み上げた走力がなくなるわけではありません。
咳をしながらのジョグは、損のほうが大きい
咳は、ネックチェックでは「首から下」の症状です。咳が出るのにジョグを続けても、大会の数日前に増やせる走力はほとんどありません。そのうえ、治るのが遅れたり、熱っぽさで走り方が乱れたり(前の章の Weidner ほか)、人にうつしたりする損があります。大会前の数日は、走らないことで失うものより、走ることで失うもののほうが大きいと考えてください。
バナナぴろし
ナップル博士
りんごちゃん何日走らないと体力が落ちるのかは、データでこちらにまとめています。
大会の数日前に風邪をひいたら|日ごとの判断の目安
ここまでの研究と目安を、大会の数日前に風邪をひいたときの判断に並べ直すと、こうなります。
インフルエンザ・新型コロナかもしれないとき
急に高い熱が出た、体じゅうが痛い、まわりで流行っている、というときは、ただの風邪ではないかもしれません。医療機関で相談してください。参考までに、学校では、インフルエンザは「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」出席停止です(学校保健安全法施行規則 第19条)。人にうつす期間の目安として、大会の出場を考えるときにも頭に入れておきたい数字です。
風邪を早く治すといわれること|睡眠・ビタミンC・亜鉛の数字
大会までに少しでも早く治したい。よく言われる方法を、研究の数字で見ておきます。
確実にできることは、よく寝ることです。熱があるときは汗や呼吸で水分が出ていくので、水分もこまめにとります。体温は毎日、同じ時間に測っておくと、「下がったかどうか」を自分の思い込みでなく数字で決められます。
🍌 熱を数字で見る体温計と、水分の補給に
熱が下がったかは、思い込みでなく体温計の数字で。熱で失った水分は、経口補水液でこまめに。
体調不良とマラソンのよくある質問
微熱があります。フルマラソンに出てもいいですか?
熱があるときの激しい運動は避けるのが、スポーツ医学の考え方です(Frimanほか)。長距離レースに出るランナー7,031人の研究では、熱やだるさなど全身の症状があった人は、完走できない割合が症状のない人の1.9倍でした(Van Tonderほか、2016年)。当日の朝に熱があれば、出場をやめるのが安全です。
喉が痛いだけなら、走ってもいいですか?
熱がなく、症状が鼻や喉など「首から上」だけなら、軽い運動はよいという目安があります(ネックチェック)。熱のない風邪で中くらいの運動をしても症状が悪くならなかった実験もあります(Weidnerほか、1998年)。ただし、科学的に確かめられた線引きではないので、走って悪くなるならやめてください。
大会前に数日走らないと、走力は落ちますか?
ほとんど落ちません。27の研究をまとめた分析では、大会前の2週間で練習量を41〜60%減らすのが、いちばん成績が上がるやり方でした(Bosquetほか、2007年)。体力が目に見えて落ちるのは、数週間休んだときの話です。
咳が出ていますが、ジョグを続けてもいいですか?
咳は、ネックチェックでは「首から下」の症状なので、休む側です。大会の数日前のジョグで増やせる走力はほとんどなく、治るのが遅れたり、人にうつしたりする損のほうが大きくなります。
まとめ|熱がある間は寝る。数日休んでも走力は落ちにくい
- 熱があるときの激しい運動は避ける。微熱でも熱は熱
- 首から上だけで熱がなければ、軽い運動はよいという目安(ネックチェック)。ただし科学的な線引きではない
- 熱のない風邪で中くらいの運動をしても、症状は悪くならなかった(Weidnerほか)
- 熱っぽいと感じている人は、走り方が乱れた
- 大会前に全身の症状があった人は、完走できない割合が1.9倍(7,031人)
- マラソンのあとの1週間は、風邪をひく人が増える(12.9%)
- 大会前の数日休んでも、走力はほとんど落ちない。もともと量を減らす時期
- 確実なのは、よく寝ること。ビタミンC・亜鉛は、ひいてからの効果ははっきりしない
大会の数日前に風邪をひいたら、まずは走らずに治すこと。そして当日の朝、熱と体の具合で決めてください。積み上げた練習は、数日では消えません。
バナナぴろし
りんごちゃん大会前の練習量の落とし方は、こちらにまとめています。





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