バナナぴろし
りんごちゃん
バナナぴろし
ナップル博士脱水と熱中症は別のものですが、つながっています。体の水分が減ると汗をかきにくくなり、熱が逃げず、熱中症に近づきます。ただし、水を飲んでいても暑すぎれば熱中症になります。
張り紙の2つのチェックは便利ですが、万能ではありません。爪押しは「遅ければ注意」のサインで、「速いから脱水していない」とは言えません。尿の色は日常の目安として優秀ですが、走った直後の色は遅れて変わります。
この記事では、52歳の筆者(バナナぴろし:サブエガ=2時間49分38秒)が実際に張り紙を試したうえで、論文と公的な資料を調べ、ランナーの脱水の見つけ方と水分のとり方をまとめます。
- 脱水と熱中症は別物だが関係がある:脱水が進むと体の熱が逃げにくくなる
- 爪押しは過信しない:寒さと年齢で遅くなり、脱水していても遅くならないことがある
- 尿の色は1日の目安に:便器の中では薄まる。走った直後は遅れて変わる
- コーラ色・赤・茶色の尿はすぐ受診:筋肉が壊れている病気などの恐れがある
- 飲みすぎも危険:ボストンマラソンの完走者の13%が低ナトリウム血症だった
- いちばん確かなのは体重:走る前後の体重で、自分の汗の量が分かる
・張り紙の「爪押し」と「尿の色」の中身
・脱水と熱中症の関係
・爪押しテストが当てになる場面、ならない場面
・尿の色の正しい見方と、すぐ病院へ行く色
・水分が足りないと走力は落ちるのか
・飲みすぎの危険と、ちょうどいい量の決め方
公園のトイレで見つけた「隠れ脱水症の見つけ方」
張り紙には、2つのセルフチェックが書かれていました。1つ目は爪です。

2つ目は尿の色です。5段階の色と、そのときに飲む量が書かれています。

筆者も爪を押してみました。結果は問題なしです。……と、ここで安心してよいのでしょうか。調べてみると、ランナーが知っておきたい落とし穴がいくつも出てきました。
まず言葉の確認です。「隠れ脱水」(かくれ脱水)は、済生会の解説によると、脱水症になりかけているのに、本人も周りも気づかず、対策がとれていない状態のことです。なんとなくだるい、疲れやすいといった小さな変化がサインになります。
脱水と熱中症の関係|同じものではないが、つながっている
2つをつなぐのは、体の中の水です。走ると体に熱がたまり、体は皮ふに血を送って、汗で熱を逃がします。脱水で血の中の水分が減ると、この仕組みが弱くなります。汗と血の流れで冷やせなくなり、体温が上がりやすくなるのです(環境省 熱中症環境保健マニュアル)。

ただし、水さえ飲めば大丈夫ではありません。気温や湿度が高すぎると、汗が乾かず、熱を逃がせません。だから日本スポーツ協会の熱中症予防運動指針は、暑さ指数(WBGT)31以上を「運動は原則中止」としています。
日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2024には、最も重い「IV度」が加わりました。深部体温が40.0℃以上で、呼びかけなどへの反応が強く悪い状態です。命に関わるので、すぐに体を冷やす必要があります。
バナナぴろし
りんごちゃん
ナップル博士爪押しテストの実力|3秒の基準とランナーの落とし穴
爪押しの正式な名前は毛細血管再充満時間(CRT)です。救急や小児科で、血のめぐりを見るために使われてきました。
昔から「2秒以内が正常」と言われてきましたが、Schriger・Baraff(1988)が健康な人約300人を測ると、次のことが分かりました。
つまり、冬の朝に冷えた手で測ると、脱水がなくても遅く出ます。張り紙の「3秒」の根拠は張り紙には書かれていませんが、2秒より少しゆるい基準です。
では、脱水を見つける力はどうでしょうか。Fleming ほか(2015)のまとめでは、嘔吐や下痢の子どもの5%の脱水に対して、CRTの特異度は89〜94%と高い一方、感度は0〜94%と研究によってバラバラでした。かみくだくと、次のようになります。
- 遅い:何かあるかもしれないサイン。手が冷えていないかも確かめる
- 速い:「脱水していない」の証明にはならない
- 大人のランナーの研究:今回の調べでは見つからなかった。上の数字は主に子どものもの
走っている最中は、体が熱を逃がすために皮ふへ血を送っています。そのため、水分が減っていても爪の色はすぐ戻るのではないか、と筆者は考えています(ここは研究で確かめられた話ではなく、推測です)。
バナナぴろし尿の色チェックの見方|便器の中では正しく見えない
尿の色のほうは、スポーツの世界でも使われています。Armstrong ほか(1994)は、尿の色が尿の濃さ(比重・浸透圧)と強く結びつくことを示し、現場で使える目安だとしました。実験室のような正確さはありませんが、手軽です。
ただし、見方にコツがあります。米国アスレティックトレーナー協会の指針(2017)と研究から、注意点を並べます。
公園のトイレで便器をのぞいても、正しい色は分かりません。おすすめの使い方は、朝のトイレで「いつもより濃いな」と気づくことです。レース前日や当日の朝に濃ければ、少しずつ飲んでおきます。
張り紙の「赤や茶色が混じるときは病院へ」は、ランナーにとても大事な一文です。同じ指針は、チャートでいちばん濃い色(コーラのような色)について、筋肉が壊れて色素が尿に出ている状態(横紋筋融解症)や腎臓の不調を示すので、すぐ受診するよう書いています。走る衝撃で血尿が出ることもありますが、見た目では区別できません。レースのあとに濃い茶色の尿が出たら、水を飲んで様子を見ないで受診してください。
りんごちゃん脱水すると走力は落ちる?|「体重の2%」の説と反対の研究
「体重の2%の水分が減ると、持久力が落ちる」。ランナーならよく聞く話です。Cheuvront・Kenefick(2014)も、2%以上で持久力が下がるとまとめています。一方で、これに反対する研究もあります。
おもしろい結果ですが、そのまま市民ランナーの話にはできません。Goulet と Wall は自転車の実験で、Beis は世界のトップ選手です。2時間6分で走る選手と、4時間かけて走る市民ランナーでは、暑さを浴びる時間がまったく違います。米国の指針は今も、運動の終わりの体重の減りを2%未満にすることをすすめています。
筆者の結論はこうです。2%を超えたら即アウトではありません。でも、市民ランナーの安全の線として2%は覚えておく。体重60kgなら1.2kgです。
飲みすぎも危険|ボストンマラソンの13%が低ナトリウム血症
脱水が怖いからといって、たくさん飲めばよいわけではありません。Almond ほか(2005)は、2002年のボストンマラソンの完走者488人の血液を調べました。
ポイントは、走っているのに体重が増えるのは飲みすぎということです。そして、ゆっくり走る人ほど、飲む時間と回数が増えて危険になります。スポーツドリンクなら安心、というわけでもありません。

張り紙の「今すぐ1000ml」は、日常の中で濃い尿が出た人向けの目安と考えるのがよさそうです(張り紙に「すぐに報告して下さい」とあるので、もとは職場向けの資料かもしれません)。走ったあとのランナーが一気に1リットル飲むのはおすすめできません。少しずつ、何回かに分けて飲みましょう。
バナナぴろし
ナップル博士ランナーの水分のとり方|体重で自分の汗の量を知る
汗の量は人によって大きく違います。そこで米国スポーツ医学会(2007)も米国の指針も、走る前後の体重を測って、自分の量を知ることをすすめています。
- 汗の量(L)=走る前の体重(kg)-走ったあとの体重(kg)+飲んだ量(L)-尿の量(L)
- 1時間の汗の量(L)=汗の量÷走った時間
- 例:60.0kg→59.5kg、飲んだ量0.2L、尿なし、1時間のラン=1時間に0.7L
測るときは服を脱ぎ、汗をふいてから乗ります。気温でも汗の量は変わるので、暑い日と涼しい日で1回ずつ測ると、感覚がつかめます。
レース中の量は、米国スポーツ医学会の目安が1時間に0.4〜0.8Lです(Beis ほか 2012が紹介)。トップ選手の実測も平均0.55Lでした。汗の量が分からないときは、のどの渇きに合わせて飲むのが、飲みすぎを防ぐ安全なやり方です(米国の指針)。
ふらふらする、頭が痛い、吐き気がするときは、走るのをやめて日かげで体を冷やします。自分で飲めない、受け答えがおかしい、けいれんしているときは、すぐに救急車を呼びます(環境省)。ぐったりしている人に無理に飲ませてはいけません。
🍌 自分の水分量を知るための2つ
走る前後の体重を測る体重計と、練習用の粉末スポーツドリンクです。粉末はボトルに合わせて作れます。
タニタ 体重計 HD-6712,500円 税込
ポカリスエット 粉末 1L用1,200円〜 税込
暑い日の冷却アイテムはこちら
52歳の筆者の体調管理|レース前500mlと5kmごとの給水
筆者が心がけているのは、シンプルな2つです。
これを計算してみます。フルの給水を5kmごとに8回、紙コップ1杯を150mlとすると(150mlは計算のための仮の量です)、合計で約1.2Lです。3時間30分で走ると、1時間に約340mlになります。目安の0.4〜0.8Lより少し少なめで、飲みすぎの心配はあまりありません。涼しいレースならこれでよさそうですが、暑い日はもう少し足したほうがよさそうです。
マラソンは、当日の気合いより、体調の管理で決まるところがあります。筆者は今回、足利のハーフを微熱と足首の張りでキャンセルしました。発熱や下痢のときは、走る前から体の水分が減っています。そこで無理に走れば、脱水と熱中症に近づくだけです。
バナナぴろし
りんごちゃん隠れ脱水と熱中症についてよくある質問
脱水と熱中症は関係ありますか?
あります。脱水で体の水分が減ると、汗や皮ふの血の流れで熱を逃がしにくくなり、熱中症に近づきます。ただし別のものです。脱水は冬の発熱や下痢でも起き、熱中症は水を飲んでいても暑すぎれば起きます。
爪を押して3秒以内に戻れば、脱水ではありませんか?
言い切れません。子どもの研究では、脱水を見つける力(感度)は0〜94%と研究によって大きく違いました。遅いときは注意のサインですが、速いから大丈夫とは言えません。手が冷えると、脱水がなくても遅くなります。
尿の色はいつ見ればいいですか?
1日の中や、日をまたいで見るのが向いています。走った直後は変化が遅れます。便器の中では水で薄まるので、正しく見るなら透明な容器にとり、明るい場所で見ます。ビタミン剤を飲んだ日は濃い黄色になるので当てになりません。
走ったあとに尿が茶色やコーラ色になりました。どうすればいいですか?
水を飲んで様子を見ないで、すぐに病院へ行ってください。筋肉が壊れて色素が尿に出ている状態(横紋筋融解症)や、腎臓の不調の恐れがあります。
マラソンではどのくらい水を飲めばいいですか?
人によって違います。米国スポーツ医学会の目安は1時間に0.4〜0.8Lです。走る前後の体重で自分の汗の量を調べるのが確実です。分からないときは、のどの渇きに合わせて飲みます。走って体重が増えるのは飲みすぎです。
涼しい秋や冬でも脱水しますか?
します。寒いとのどが渇きにくくなり、4℃の環境では渇きの感覚が最大40%弱まった研究があります(Kenefick ほか 2004)。涼しい日でも給水所を飛ばさず、一口は飲むようにしましょう。
まとめ|爪と尿と体重で、自分の体を見る
- 脱水と熱中症は別のものだが、脱水が進むと熱が逃げにくくなり、熱中症に近づく
- 爪押しは「遅ければ注意」のサイン。寒さでも遅くなり、速くても安心はできない
- 尿の色は1日の目安に。便器の中では薄まり、走った直後は遅れて変わる
- 赤・茶色・コーラ色の尿はすぐ病院へ
- 飲みすぎも危険。走って体重が増えたら飲みすぎ
- 走る前後の体重で、自分の汗の量を知る。分からないときはのどの渇きに合わせる
スタート前の準備もあわせて






コメント