りんごちゃん
バナナぴろし
りんごちゃん
ナップル博士
ナップル博士「ゆっくり走るのが難しい」「ゆっくり走るとかえって疲れる」。これは初心者だけの悩みではありません。むしろ速く走れるランナーほど、極端にゆっくりなペースが苦手になりがちです。
私はフルマラソンの自己ベストが2時間49分38秒(サブエガ)で、普段のジョグはキロ5分前後です。その私が、10月5日の夕方、足首を痛めているためにキロ7分を守って10.57kmを走りました。正直に言うと、ずっともどかしい10kmでした。
この記事では、サブスリーレベルのランナーがキロ7分のジョグを難しいと感じる理由を、体のしくみと、私がランニングウォッチで記録してきた2023〜2026年のラン598本のデータから説明します。そのうえで、キロ7分を楽に走るフォームのコツと、ゆっくり走る日に向くシューズをまとめます。
- ゆっくり走るのが難しい・疲れる3つの理由(バネ・使う筋肉・上下動)
- 598本のデータで見る「ペースを落とすと何が変わるか」
- キロ7分を楽に走るコツ5つ(ピッチ・着地・ひざ・上下動・腕振り)
- キロ7分ジョグの効果と、何km走ればいいか
- ゆっくり走る日に厚底カーボンが向かない理由と、選ぶシューズ
ゆっくり走るのが難しい・疲れる3つの理由
キロ7分は時速にすると約8.6kmです。歩きと走りが切りかわる速さは時速7km前後と言われていて、キロ7分は「走り」としてはかなり遅い側にあります。普段キロ4〜5分台で走っている脚にとっては、ほとんど別の運動です。
理由1:脚の「バネ」が使えない
走るとき、着地した瞬間にアキレス腱や足の裏の腱が引きのばされ、そこにたまった力が、地面をけるときにバネのように戻って体を前へ運びます。このバネがよく働くのは、足が地面についている時間(接地時間)が短いときです。
ペースを落とすと接地時間が長くなり、ためた力が推進力に変わる前に逃げてしまいます。バネの助けがなくなったぶん、筋肉が自分の力で体を持ち上げて進むことになる。これが「ゆっくりなのに脚が重い」「泥の中を走っているみたい」と感じる正体です。

理由2:使う筋肉が「お尻・もも裏」から「前もも・ふくらはぎ」へ移る
速く走るときは、股関節を後ろへ大きく振るお尻ともも裏がおもに働きます。ペースが落ちると股関節の仕事は小さくなり、かわりに着地でひざが沈みすぎないように支える前ももと、足首を支えるふくらはぎの負担が大きくなると言われています。
前ももやふくらはぎは、着地のたびに引きのばされながら踏んばる使われ方をします。この使われ方は筋肉痛が出やすいタイプの負荷です。普段お尻主導で走っている人ほど、ゆっくりの日に前ももやふくらはぎだけが張るのはこのためです。
理由3:歩幅を残したまま遅くすると、上に跳ねる
速いランナーには、大きな歩幅のフォームが体にしみついています。その歩幅のまま遅くしようとすると、空中にいる時間をのばす=上に跳ねることでスピードを落とすことになりがちです。上下に跳ねるほど着地の衝撃は大きくなり、前に進む力にはなりません。
走る速さと接地時間・筋肉の使われ方の関係についての研究や解説(AIのGeminiで集めた国内外の文献)をもとに、筆者がまとめたものです。
りんごちゃん
ナップル博士接地時間・上下動・「バネ」の使い方を、速く走る側から詳しく書いた記事はこちら。
598本のデータで見る|ペースを落とすと歩幅が縮み、着地が増える
では、実際にペースを落とすと走り方はどう変わるのか。私のランニングウォッチの記録(Stravaに残っている2023〜2026年の3km以上のランで、ピッチの記録があるもの)を、平均ペースごとに分けて並べました。

※ピッチは各ランの平均ケイデンス、歩幅は「距離÷歩数」で計算。動いていた時間で出したペースを30秒きざみ(例:キロ7分00秒前後=6分45秒〜7分14秒)で分け、中央値をとっています。
わかったこと1:遅くすると、ピッチより歩幅が縮む
キロ4分からキロ7分に落とすと、ピッチは186→169で約1割減。それに対して歩幅は135cm→86cmで約4割も縮みます。私の体は、スピードを主に歩幅で調整しているということです。キロ7分より遅い7分半前後になると、ピッチも158まで落ちていました。
わかったこと2:キロ7分は、1kmあたりの着地が1.6倍
歩幅が縮むと、同じ1kmを進むのに必要な歩数が増えます。キロ4分なら約740歩、キロ7分なら約1,170歩。10kmなら片脚あたり約5,800回の着地で、キロ4分(約3,700回)の1.6倍です。1回ごとの衝撃は小さくても、回数はずっと多い。「ゆっくりでも10kmは脚にくる」のは、数字で見ても当然でした。
わかったこと3:そもそも、ほとんど走ったことがないペースだった
いちばん多いのはキロ5分前後の206本。キロ6分45秒より遅いランは、ピッチの記録がある627本のうち39本(約6%)しかありませんでした。私にとってキロ7分は体が慣れていないペースなのです。慣れていない動きがぎこちないのは、ある意味あたりまえです。
10月5日の夕方、キロ7分で10.57km
前の日に花島公園でキロ4分台まで上げてしまい、翌朝、内くるぶしに歩くのもつらい痛みが出ました。午後に痛みが引いたので、夕方は「キロ7分より速くしない」とだけ決めて走りました。
※計測はCOROSの時計。ピッチはCOROSの片脚の値を2倍にしたもの。
前の日の10kmの中だけでも、キロ6分38秒の1km目は歩幅87cm、キロ4分01秒のラスト1kmは129cm。ピッチは172→192なので、やはりスピードの差の大部分は歩幅で生まれていました。
夕方のジョグは、1kmごとのラップがほとんどキロ7分前後で、心拍は120〜130台。足首は前半が痛く、後半は楽になりました。COROSの「効率」の評価は94%で「低い」と出ています。この評価が何を見ているかは公開されていませんが、少なくとも私の体が得意なペースではなかったことは、上のデータからも言えそうです。
バナナぴろし
ナップル博士キロ7分を楽に走るコツ5つ|ピッチを保って歩幅を小さく
理由がわかれば、対策もはっきりします。ポイントは「いつもの走りを遅くする」のではなく、「キロ7分専用の小さな走り」に切りかえることです。

コツ1:ピッチは落としすぎない。歩幅を小さくして遅くする
スピードを落とすときは、ピッチではなく歩幅を小さくするのが基本です。ピッチを保つと接地時間が長くなりすぎず、上に跳ねる動きも出にくくなります。目安としては170歩/分前後。私のデータでもキロ7分前後は169歩/分で、7分半になると158歩/分まで落ちていました。ペースが落ちてきたら、まずピッチが落ちていないかを見るとよいです。
歩幅は、歩くときと同じか、それより小さいくらいで十分です。福岡大学の田中宏暁先生が広めた「スロージョギング」の、小刻みに足を運ぶ走り方に近いイメージです。ピッチと歩数の関係はケイデンス(ピッチ)180は本当?で詳しく書いています。
コツ2:足は体の真下に「置く」
遅いペースで歩幅を出そうとすると、足を体の前に投げ出してかかとからブレーキをかけるような着地になりがちです。足は前に振り出さず、体の真下にそっと置く。足の裏全体で着地する感覚が目安です。
コツ3:ひざと足首をやわらかく使う
ひざを伸ばしきって突っぱるように着地すると、衝撃がそのまま関節や腱に入ります。着地の瞬間に股関節・ひざ・足首を少しずつ曲げてクッションにするイメージです。ただし沈みすぎると前ももが疲れるので、「軽く曲げる」くらいにとどめます。
コツ4:上に跳ねない。ももを高く上げない
キロ7分なら、足は地面から数センチ浮けば十分前に進みます。ももを高く上げる必要はありません。頭の高さがなるべく変わらないように、低く、静かに進みます。
コツ5:上半身はリラックス、腕振りは小さく
胸を軽く張って肩の力を抜き、腕はひじを軽く後ろに引くだけの小さな振りにします。腕を大きく振ると歩幅も大きくなり、ペースが勝手に上がります。
りんごちゃん
バナナぴろしキロ7分ジョグの効果と、走る距離の目安
「そこまでゆっくり走って意味があるの?」と思う人もいるはずです。遅すぎる距離はトレーニングにならない「ジャンクマイル(むだな距離)」だ、という声もあります。
キロ7分のジョグの役目は、走力を上げることではなく、回復を早めることです。体に新しい負荷をほとんどかけずに血の流れをよくし、きつい練習のあとの脚を整える。いわゆるアクティブリカバリー(動いて休む)です。低い強度で長く動くことは、筋肉のまわりの毛細血管やミトコンドリア(筋肉の中のエネルギー工場)を増やす刺激にもなると言われています。
※ペースは筆者(フル2時間49分38秒)の例です。人によってちがうので、ペースより心拍や「会話できるか」で決めるのが確実です。心拍ゾーンの決め方はランニングの心拍ゾーンの決め方にまとめています。
回復ジョグではない「ふつうのジョグ」は何分で走る? サブ5〜サブ2時間50分の目標タイム別の早見表はこちら。
何km走ればいい?
回復が目的なら、長く走る必要はありません。前の章のとおり、キロ7分は1kmあたりの着地が多いので、10km走ると片脚で約5,800回の着地になります。私は10月5日にキロ7分で10.57km走ったあと、AI(Gemini)に状態を伝えると、「今の足には多すぎる。次に走るならキロ7分のまま5〜6km(30〜40分)で切り上げる」と提案されました。血の流れを回すのが目的なら、それで足りるという理由です。
キロ7分でも走らないほうがいい日
- 歩くと痛い・痛い場所を指でさせる(組織が傷んでいる合図のことがある)
- 腫れている・熱を持っている
- 走り出して痛みが強くなっていく
- 睡眠不足や体調不良で、朝からだるさが強い
こういう日は、キロ7分でも休むか歩くだけにします。私の目安は「走ったあとの違和感が、翌朝に残っているかどうか」。残っていたら、その日の距離は多すぎたと考えています。痛みが続くときは、自己判断せず医療機関で相談してください。
りんごちゃん
ナップル博士ゆっくり走る日のシューズ|厚底カーボンが向かない理由
ゆっくり走る日に、いちばん避けたいのがレース用の厚底カーボンシューズです。クッションが厚いから脚にやさしそうに見えますが、キロ7分には向きません。
- プレートがしならない:カーボンプレートは、速いペースで強く踏みこんで初めてしなる作り。ゆっくりだと「曲がらない硬い板」になり、足の自然な曲がりをじゃまします
- グラつきやすい:ソールが高いぶん横に不安定。接地時間が長いキロ7分では、足首が内側に倒れこむ時間も長くなります
反対に、薄底やマリンシューズは、かかとが低いぶんふくらはぎやアキレス腱が強く引きのばされます。脚に痛みがある時期にはこれも負担になります。私はいま、かかとが厚く、横ブレを支えるタイプのジョグシューズでゆっくり走り、薄底とカーボンは靴箱にしまっています(理由は9月の月間走行距離の総括に書きました)。シューズの種類ごとの違いはランニングシューズの選び方も参考にしてください。
🍌 ゆっくり走る日のジョグシューズ 2つ
横ブレを支える安定タイプのGT-2000 14と、カーボンなしでクッションのあるノヴァブラスト6。どちらもアシックスのジョグ向けのモデルです。
価格は2026年10月5日時点の楽天市場のものです。シューズが合うかどうかは足の形や走り方でも変わるので、できれば店で試し履きしてください。
ゆっくり走ることに関するよくある質問
なぜゆっくり走ると疲れるのですか?
ペースが落ちると足が地面についている時間が長くなり、アキレス腱などのバネの力が使えなくなるからです。そのぶん前ももやふくらはぎが自分の力で体を支えて進むことになり、速く走るときとはちがう疲れ方をします。1kmあたりの着地の回数も増えます。
ゆっくり走るのが難しいのは、なぜですか?
速いランナーほど、大きな歩幅のフォームが体にしみついているからです。そのまま遅くしようとすると上に跳ねたり、ブレーキをかけるような着地になったりします。筆者の記録でも、キロ6分45秒より遅いランは全体の約6%しかなく、体が慣れていないペースでした。
キロ7分で楽に走るコツは?
ピッチを落としすぎず(170歩/分前後)、歩幅を小さくして遅くすることです。足は体の真下に置き、ひざと足首をやわらかく使い、ももを高く上げないようにします。腕振りを小さくすると、ペースが勝手に上がるのも防げます。
ゆっくり走るのは意味がない(ジャンクマイル)のでは?
キロ7分のような遅いジョグの目的は、走力を上げることではなく回復を早めることです。新しい負荷をほとんどかけずに血の流れをよくし、きつい練習のあとの脚を整えます。ただし距離を走りすぎると回復になりません。筆者は5〜6km(30〜40分)を目安にしています。
ゆっくり走る日に厚底カーボンシューズを履いてもいいですか?
あまり向きません。カーボンプレートは速いペースで強く踏みこんだときにしなる作りで、ゆっくりでは硬い板のようになり、ソールが高いぶんグラつきやすくなります。かかとの厚い、カーボンの入っていないジョグシューズのほうが向いています。
まとめ|ゆっくり走るのは「別の技術」
速く走れる人ほど、ゆっくり走るのは難しい。それは走力が足りないからではなく、速さに合わせて体ができあがっているからです。キロ7分は、いつもの走りを遅くしたものではなく、小さく、低く、静かに進む別の技術。最初の一歩として、次のジョグで「歩幅を半分にして、ピッチは変えない」を試してみてください。
りんごちゃん
ナップル博士この記事の元になった、テンポ走の翌朝の痛みと、夕方のキロ7分10.57kmの日誌はこちら。






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